宝島社×日経DIコラボ企画【最終回】 毒島花織、QT延長を引き起こす薬を語る 第3話:不安な薬剤師の処方解析(10) 刑部さんが言ったように、これで失礼します、というわけにはいかなかった。 強盗傷害事件になるかもしれないということで、林さんが救急車で運ばれた後、それぞれにパトカーで警察署に連れて行かれて事情を聞かれたのだ。結局、警察から解放されたのは八時を過ぎた頃だった。「今日はありがとう… 2021/12/20 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 クレーム電話に込められたSOS 第3話:不安な薬剤師の処方解析(9) 刑部さんとの話を終えた警察官にそのことを伝えた。警察官の顔に緊張が走る。「林さん、いらっしゃいますか、林さん」と玄関の前に立って警察官が呼ぶ。 しかし出て来るどころか、それに応える声もない。孫を名乗る男も戻って来なかった。「中に入るのはまずいですかね」と爽太は訊いた。「はっ… 2021/12/15 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 抗不整脈薬の飲み過ぎは突然死の恐れ 第3話:不安な薬剤師の処方解析(8) 首を巡らすと白いレインコートを着た毒島さんが立っている。どうしてここにと思う間もなく、「林さんのお孫さんですね。私、どうめき薬局の毒島といいます。林マキ子さんが服用している薬について、至急お話ししたいことがあります」と喋り出す。「今日の夕方、林さんから薬局に、前回受け取った薬… 2021/12/08 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 「婆さんは寝てる」と会わせてくれない孫 第3話:不安な薬剤師の処方解析(7) 「だって夕方に飲むから六時から六時半の間に持って来て、と言われたんですよ。いくらなんでも倒れるのが早すぎますよ」「でも、もしもということもありますよ」 刑部さんはぎゅっと唇を噛んでから、身を翻して母屋に向かった。爽太も急いで後を追う。刑部さんは再びインターホンを押したが、応答… 2021/11/16 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 薬剤師は処方箋から病名を推測する探偵 第3話:不安な薬剤師の処方解析(6) 「そういう事情ですか。でもそれなら時間になっても応答しないというのは変ですよね」 刑部さんの話を聞き終わり、爽太は周囲を見まわした。あたりはひっそり静まり返っていて、歩いている人影も見当たらない。時計を見るとすでに六時二十分を過ぎている。「林さんは一人暮らしですか」「方波見さ… 2021/10/18 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 指定時刻の居宅訪問に応答なし 第3話:不安な薬剤師の処方解析(5) コーヒーショップを出ると雨はやんでいた。 大通りを離れ、細い道を進む。煤けたような板塀の横を曲がって細い路地に入ると、街路灯が少ないせいか、いきなり闇が濃くなる印象があった。 手入れをされていない生垣が、道路をふさぐように枝を伸ばしている。そこは人が住んでいる気配が感じられ… 2021/10/04 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 毒島花織にミスコン準グランプリの過去 第3話:不安な薬剤師の処方解析(4) 「毒島さんを一言で言えば薬オタクですね。本人は否定しますけど、私からすればそれ以外に表現する言葉は思い浮かびません」 刑部さんはきっぱりと言った。会社員や学生で混み合うコーヒーショップのカウンター、刑部さんの前にはロイヤルミルクティーが湯気を立てている。「やっぱり同じ薬剤師の… 2021/09/21 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 “俺様院長”への疑義照会 第3話:不安な薬剤師の処方解析(3) ホームで電車を待つ間にその話をした。 話が終わると、「あそこはいつもそうなんですよ」と刑部さんは顔をしかめた。「あの院長は最悪です。偉そうで、威張ってて、疑義照会をしても、薬剤師は余計な口を出さずに黙って薬を出してりゃいいんだって態度がありありなんです。本当にあそこの処方箋… 2021/09/10 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 薬を少なく出されたというクレームの電話 第3話:不安な薬剤師の処方解析(2) 話を切り上げるタイミングを見つけられず、一緒に歩きながら爽太は訊いた。 アレルギーの薬を飲んでアレルギーになるなんて話は聞いたこともない。「私にも意味がわかりません。どうやらその人、アレルギーの薬を飲むと、体がアレルギー体質になると本気で信じ込んでいるようでした。たぶん理屈… 2021/09/03 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 アレルギーの薬を飲むとアレルギーに? 第3話:不安な薬剤師の処方解析(1) 水曜日の午後四時。夜勤を終えた爽太は風花にいた。 この店の窓際の席に座ると、道をはさんでどうめき薬局の入ったビルの通用口が見えるのだ。 前に来たとき、爽太はその事実に気がついた。そこでその席に腰を落ち着けて、仕事を終えた毒島さんが出てくるのを待とうと考えたのだ。 姿を見たら… 2021/08/24 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 くず入れの中の未開封の軟膏 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(最終回) 「……子供に重い食物アレルギーがあります。卵や牛乳、小麦、それから果物や海産物の一部がダメで、食事にはかなり気を使っています」「どうしてそんなことがわかるんですか」 爽太は驚いて毒島さんに訊いた。… 2021/05/18 医薬品
宝島社×日経DIコラボ企画 受診勧奨も薬剤師の仕事の一部 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(13) 「すごいですね。一人で大騒ぎをして行っちゃいました」 中野さんがいなくなった控え室で爽太は思わず呟いた。「あの人はいつもあんな感じです。ワタシはもう慣れました」 リンさんは笑いながら言ってから、「ああ、もうこんな時間、帰らなきゃ」と時計を見て大慌てで控え室を出て行った。「リン… 2021/05/04 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 知識に裏打ちされた薬剤師の発言 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(12) 中野さんの状態を考えるに、睡眠薬を飲まされたことを疑うよりも、病気であることを疑うべきだと思います、と毒島さんは言葉を続けた。 しかし中野さんは納得しない。「そんなのただの知識でしょう。睡眠薬を実際に飲んだこともないくせに適当なことを言わないでよ」と言い返す。 すると毒島さ… 2021/04/23 医薬品
宝島社×日経DIコラボ企画 突然襲われる強い眠気の原因 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(11) 「絶対に睡眠薬ですよ。この人が砕いて混入したんです」 中野さんが言い立てたが、毒島さんは静かに首を横にふった。「残念ですが、これだけではそうとも違うとも言えません」 中野さんは不満そうな顔をして、毒島さんの手から水筒を奪いとる。「そうですか。仕方ないですね。それなら警察に連絡… 2021/04/16 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 睡眠薬と思しき破片の正体は 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(10) 「それだけ見れば十分よ。いつも私に叱られているから、仕返しでそんなことをしたのよ。この人、仕事の段取りが悪くて、いつもあたふたしているの。それにパートへの対応も落第点よ。ただ優しくするばかりで、叱ることが出来ないのよ。だからパートはつけあがるばかりだわ。それが続けば仕事の質… 2021/04/06 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 水筒に入れられた睡眠薬!? 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(9) 客室係の控え室では中野さんと南さんが睨み合っていた。「どうしたんですか」「この人が水筒に睡眠薬を入れたのよ」 中野さんは蓋を取ったステンレス製の水筒を突き出した。ハーブティーを入れていたものだ。 中を覗くと薄茶色の液体の中に、白い細かな欠片が漂っているのが見える。「何かあり… 2021/03/30 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 薬剤師、毒島花織の提案は… 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(8) 「じゃあ、茜の症状が回復しないで薬ばかりが強くなっていったのは、私のせいってことですか」 美和子はショックを受けたような声で言う。「誰のせいということはありません。とりあえず理解してほしいのは、ステロイド外用薬はそこまで危険な薬ではないということです。用法用量を守って使えば、… 2021/03/23 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 ステロイドの正しい塗布量は 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(7) 三〇五号室では、美和子が苛立ちを隠そうともしないで待っていた。なくなった薬をホテルの費用で弁償したいが、そのためには茜を皮膚科に連れて行く必要があることを爽太は率直に打ち明けた。しかし美和子は納得しなかった。「この子はもともと体が強くないのよ。今から病院だ、薬局だって引っ張り… 2021/03/16 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 病気にかかることは自己責任!? 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(3) 「いや。平気です」 なんとなく居心地が悪くて、爽太は勧めを断った。 中野さんは悪い人ではないが、口調が強く、仕事に妥協がないことから、色々と問題のある人だった。 仏頂面で、ぶっきらぼうなところも、人に敬遠される理由になっている。 過去にはパートさんが苦情を書き連ねた投書を本部… 2021/02/15 皮膚科
宝島社×日経DIコラボ企画 ゴミに紛れたステロイド外用薬を探せ 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(2) 客室係は社員二人とパート十人のすべてが女性という構成だ。 幸いなことに控え室には本日勤務のほぼ全員が残っていた。 まずは責任者である主任の中野さんに事情を話す。 年齢は四十代後半。その仕事ぶりは優秀で、他の部署の人間からも一目置かれている存在だ。 ただし部下には厳しく、入っ… 2021/02/08 皮膚科
宝島社×日経DIコラボ企画 消えたアトピー性皮膚炎の薬 第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(1) フロントの仕事をするにあたってクレーム対応は不可欠だ。 通された部屋が写真と違う、係の手際が悪い、掃除が行き届いていない、食事が冷たい等、その内容は多岐にわたるが、対応するに当たって最も厄介なのは、部屋の私物がなくなったというクレームだろう。… 2021/02/01 皮膚科
宝島社×日経DIコラボ企画 薬剤師さんに感謝の気持ちを 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(12) 一か月が経った。あの後、義郎さんをめぐっては一騒ぎがあったそうだ。 親族会議でその話を訊かれた義郎さんは、納豆と青汁をやめても薬の量が減らないことをおかしいとは思っていたが、それを言えば奥さんが怒って出て行ってしまうかもしれないと思い、言えなかったと打ち明けたのだ。… 2021/01/04 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 「薬剤師として当然のことをしただけです」 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(11) 慌てる爽太を、毒島さんが止めた。「落ち着いてください。大学病院であれば、ワーサリンを処方するとき、止血作用を担う凝固因子の働きを調べる検査をしているはずです。患者さんがビタミンKを多く摂っていれば薬の効果は薄れます。その結果を見て、医師は処方量を多くしていると思います。納豆… 2020/12/25 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 体調不良の原因は納豆?青汁? 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(10) 毒島さんは慌てたように時計を見た。「じゃあ、私はこれで」とそそくさと立ち上がる。「あの、毒島さん──」 食事に誘おうと思ったが、しかしいざとなると心が挫けた。 拒絶されたらどうしよう。そんな恐れに、続く言葉が出てこない。「なんでしょうか」 そう口にする毒島さんはすでに普段の… 2020/12/18 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 妹が低用量ピルを飲んでいたワケ 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(9) 「あの、実は相談したいことがあるんです」と切り出した。「家族が飲んでいる薬のことなんですが、相談できる人がいなくて困っているんです」「どういうことですか」 毒島さんは浮かせかけた腰を下ろして爽太の顔を見た。「妹なんですが、こっそりピルを飲んでいるようで、大学生なんですが、そう… 2020/12/08 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 誤診を見抜いた薬剤師 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(8) 翌日、約束の時間にどうめき薬局に行くために、爽太は眠い目をこすりながら満員電車に乗った。 ぎゅうぎゅうづめの電車で潰されそうになりながら、頭の中では同じ思いばかりがぐるぐるまわった。 妹がピルを飲んでいる。それは兄としては、いささかショックなことだった。 颯子が、まさかそん… 2020/11/30 医薬品
作家・塔山郁氏 患者に役立つ情報を集め判断する、薬剤師の仕事の深みを表現したい 薬局薬剤師が主人公の小説「薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理」(宝島社)が話題だ。2021年1月にシリーズ3作目を発刊予定である著者の塔山郁氏に、ミステリー作家から見た薬剤師の仕事の魅力について聞いた。(聞き手は本誌編集長、井田 恭子)ーー薬剤師を主人公にした小説を執筆し… 2020/11/26 薬剤師
宝島社×日経DIコラボ企画 薬の話題を探して~脳梗塞と低用量ピル~ 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(7) その夜、自宅に帰ると、「何か飲んでいる薬はある?」と爽太は母親に訊いた。「なによ。藪から棒に」夕食の支度をしながら、母親は怪訝な顔をする。 薬の話題を探そうと、帰り道にスマートフォンで検索をしたけれど、出てくる話は専門的過ぎて爽太にはとても理解できなかった。自分の経験を話題… 2020/11/20 医薬品
宝島社×日経DIコラボ企画 薬剤師の毒島さんにお礼を 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(6) ヤブ医者より下手な医者には、土手医者や筍医者、雀医者などがいるという。 藪にもなれていないのが土手医者で、藪の下に生えているのが筍医者、藪を目指して飛んでいくのが雀医者というわけだ。 落語のネタとして爽太はそれを知っていた。父親が落語好きで、子供の頃によくテープをかけていた… 2020/11/13 医薬品
宝島社×日経DIコラボ企画 耐えがたい足裏の痒みの原因は 第1話:笑わない薬剤師の健康診断(1) か、痒い──。水尾爽太は歯を食いしばって、襲ってくる痒みを必死に耐えた。 親指の付け根から広がったムズムズ感は、いまや耐え難い痒みとなって足の裏全体に広がっている。すぐにでも靴と靴下を脱ぎ捨てて、思う存分に足の裏を掻き毟りたかった。しかしそれは出来ない相談だった。到着するエ… 2020/10/06 事件・話題
宝島社×日経DIコラボ企画 プレゼントに選んだハーブティー 水尾爽太(みずおそうた)がその黒縁眼鏡の女性をはじめて見たのは、吹く風もまだ冷たい三月初旬の頃だった。 神楽坂のホテル・ミネルヴァに勤める爽太は、その日、〈風花〉(かぜはな)という喫茶店にいた。 ナポリタンが美味しいという噂を聞いて、一人で昼休みにやって来たのだ。午後一時を… 2020/09/29 事件・話題
アラフォー医師に訪れる危機(クライシス) 平野啓一郎氏の小説「マチネの終わりに」をご存じでしょうか。お笑い芸人など複数人のゲストが毎回1つのテーマに沿ってプレゼンテーションを行うテレビ番組「アメトーーク!」の「読書芸人」の回で、複数のお笑い芸人さんが推薦したベストセラーです。… 2017/07/10 医師のキャリア 医師・医学生限定コンテンツ
常に良き観察者たれ!見えないものに目を向けろ 新しい年度が始まり、当院総合診療科に2人の医師が加わってくれた。大学から実習に来る学生も交えて、少しずつ大きく、チームとしての形になってきた。その2人の医師の下、学生にも患者を受け持たせ、毎朝プレゼンをしてもらう。米国でやっていた教育回診のスタイルに、ようやく近付きつつあると… 2017/04/24 医師のキャリア
Episode 3 真逆の真実(最終話) あのときの違和感の正体 江戸大学病院の初期研修医1年目、ディーゴとジョージ、レイカ。6月から消化器外科での研修が始まり、分子標的薬治療の患者を担当することになった。同日に入院した2人の患者の血液検査結果がなかなか改善しないことに悩む3人。そしてついに、2人の患者に急変が起こる。宮沢の指示に従い、救急外来の… 2017/03/06 事件・話題
Episode 3 真逆の真実(第8話) その点滴を止めろ! 江戸大学病院の初期研修医1年目、ディーゴとジョージ、レイカ。6月から消化器外科での研修が始まり、分子標的薬治療の患者を担当することになった。同日に入院した2人の患者の血液検査結果がなかなか改善しないことに悩む3人。飲み会で消化器外科の医師たちの噂を耳にした翌朝病室に向かうと、突然… 2017/02/27 循環器
Episode 3 真逆の真実(第7話) 鳴り響くアラーム音とPHS 江戸大学病院の初期研修医1年目、ディーゴとジョージ、レイカ。6月から消化器外科での研修が始まり、分子標的薬治療の患者を担当することになった。同日に入院した2人の患者の血液検査結果がなかなか改善しないことに悩む3人。飲み会で消化器外科の医師たちの噂を耳にした翌朝、担当患者の病室に向… 2017/02/20 事件・話題
Episode 3 真逆の真実(第6話) 消化器外科のダブルエースがメスを置いた理由 江戸大学病院の初期研修医1年目、ディーゴとジョージ、レイカ。6月から消化器外科での研修が始まり、分子標的薬治療の患者を担当することになった。しかし、同日に入院した2人の患者の血液検査結果がなかなか改善しないことに悩み始めていた。… 2017/02/06 消化器
改善しないカリウム値 初期研修医のディーゴとジョージ、レイカは江戸大学病院の初期研修医。6月から、消化器外科での研修が始まった。分子標的薬治療の患者を担当することになったディーゴたちが、初回投与翌朝の採血結果を見ると…。… 2017/01/30 医師のキャリア
Episode 3 真逆の真実(第4話) 初期研修医、朝のルーチン 6月8日、水曜日。カンファレンスでは、前日の細田医局長の指示通りで治療を進めることでコンセンサスを得た。今回導入する分子標的薬は電解質異常や不整脈が報告されている。そのため、患者の電解質異常や副作用には十分注意するよう、念を押された。連日の血液検査に加えて、不整脈の有無が評価… 2017/01/23 消化器
Episode 3 真逆の真実(第3話) 同日入院の2人 6月7日火曜日。昨日、消化器外科で分子標的薬チームのトップを務める細田先生に聞いていた通り、午前中に2人の予定入院があった。1人目は海野サチさん。大腸癌肝転移に対して分子標的薬治療を行うため、入院となった。2人目は高井カネさん。この患者さんも、腎癌に分子標的薬治療を行う予定だ。僕… 2017/01/16 事件・話題
Episode 3 真逆の真実(第2話) 細田先生の逆鱗 「おうディーゴ達! 外科はどうだ?」 宮沢は、検体検査室のパソコンで作業をしていた手を止めて振り返り、いつものテンションで話しかけてきた。すると、細田先生が珍しく口調を荒げた。 2017/01/09 検査
Episode 3 真逆の真実(第1話) 医師の本分 6月6日月曜日。初期研修医になって3カ月目に突入した。僕、出井大吾と、研修同期の寺西ジョージ、早乙女麗華の3人は、今月から消化器外科に勤務することになった。「よし、外科ではいっぱいオペに入って、腕を磨くぞ!」… 2017/01/02 医師のキャリア
Episode 2 すっぱいぶどう(最終話) 彼女は「知ってしまった」 5月23日、月曜日。一連の事件が幕を閉じてから1週間が経過し、徐々に事件の全貌が明らかになってきた。先週月曜のCVカテーテル挿入後に意識をなくした宇野さんの血液を検査した結果、血中のインスリン濃度が異常高値だったことが分かった。生理現象ではあり得ない数値なので、インスリンが投与さ… 2016/10/31 循環器
Episode2 すっぱいぶどう(第6話) また起こった意識障害、ジョージが渡したものは 5月16日、月曜日。僕は、循環器病棟の個室にいた。目の前の患者さんの名前は宇野聡子さんだ。肺高血圧症の精査加療目的で入院して、本日CVカテーテル挿入の手技をすることになっている。今日も担当看護師は角野さんだ。相変わらず少し落ち着かない様子だが、慣れてきたのか額の汗は前回までより少な… 2016/10/24 事件・話題
Episode2 すっぱいぶどう(第5話) 低血糖には唐揚げラリアット MRI検査の後に採取した、院内検査分の血液検査結果が出た。「Na 143、K4.0、NH3 40、空腹時血糖(BS) 71、FT4 1.20、TSH 2.31、その他、薬物の血中濃度も全て正常範囲でした」 2016/10/17 循環器
Episode2 すっぱいぶどう(第4話) DDDDD、再起動 翌日5月13日の朝、僕たち研修医3人は病室に向かっていた。「もう何ともないよ。昨日、私気を失ってたの? そんなの初めてだよ。緊張しすぎたのかなぁ、情けないね。ごめんね」ベッドの上には、昨日の急変が嘘のように、笑顔を見せる老人がいた。レイカも少しホッとしたようだ。しばらく和やかに世… 2016/10/10 事件・話題
Episode 2 すっぱいぶどう(第3話) 急変は私のせい? 「ディーゴたち、こっちに来いよ!」電子カルテの入力を終えた宮沢が、僕らを手招きしている。近寄ってみると、電子カルテの画面には江頭先生が記載したカルテが表示されていた。「総合診療科の江頭先生のカルテは、研修医にとって非常に勉強になるカルテだからよく見ておけよ。あの人は対人コミュ… 2016/10/03 循環器
Episode 2 すっぱいぶどう(第2話) 合併症? CVカテ後の急変 午後の病室。CVカテーテルに入る宮沢とジョージは、清潔なガウンに着替えている。患者は83歳女性の山本さんだ。穿刺部位は、右内頸静脈に決まった。「4月に集中治療室から異動してきました看護師4年目の角野秋奈です。CVカテーテルの手技につかせてもらいます。よろしくお願いします」 丁寧に挨… 2016/09/26 循環器
Episode 2 すっぱいぶどう(第1話) 憧れのCVカテーテル 江戸大学病院の初期臨床研修医1年目のディーゴとジョージ、レイカは、4月から循環器内科で研修をスタートさせた。その頃、循環器内科ではカテーテル治療中の合併症が立て続けに起こる。目の前で何度も急変する現場を見て原因究明のために走りまわるディーゴ達だったが、先輩医師である宮沢の助けを… 2016/09/19 循環器
Episode 1 ディーゴ誕生(第12話) 全ては匿名の手紙から始まった 「なんか納得いかないよなー」 週末の昼下がり、僕とジョージ、レイカの3人はファミレスにいた。あのXデーで、あんなに強い口調で准教授を追い詰めたジョージは、すっかり別人のような素っ気なさで、「まあ、大学病院なんてこんなものなんだろ」と、他人事のように答える。 レイカが僕の肩を叩い… 2016/07/25 循環器
Episode 1 ディーゴ誕生(第10話) EBM! Evidence Breaks Malice 今日はいよいよXデー。「5病院合同心臓カテーテルライブ」の日だ。朝からカンファレンス室に集められ、循環器内科の医師たちに金子教授が挨拶。次に、岸田先生から注意点などの簡単な説明があり、各自、持ち場についた。 … 2016/07/11 循環器
間違いない。あとはエビデンスだ 昨夜は遅くまで、宮沢にカテーテル動画の見方を教えてもらいながら、ステントの太さや長さをまとめた。驚いたことに宮沢は、全症例の全動画を暗記していた。 2016/07/04 循環器
事故だとすれば天文学的確率 朝7時、病院に到着。連日徹夜でパソコン画面に向き合っていて疲労が蓄積したのか、昨日は帰宅後そのまま朝まで眠っていた。循環器病棟のカンファレンス室に到着すると、ジョージが電子カルテの前で何やら作業をしている。そして、机の上には数冊の医学書とギッシリ書き込まれた20枚程のレポート用… 2016/06/27 医療安全
Episode 1 ディーゴ誕生(第7話) 医師が考えたリアルタイム症例コンサルティング! 初期研修医生活は2週目に入った。 研修医3人は、みんな眠そうな顔をしている。寝不足なのは僕だけではないようだ。 2016/06/20 循環器
Episode 1 ディーゴ誕生(第6話) まさかの超お嬢様からの助け舟 ジリリリリリリリリ ――。 目覚まし時計で目が覚める。頭痛がひどい。どうやら昨日飲み過ぎて二日酔いのようだ。今日は4月17日。飲み会翌日の日曜日、学生時代であれば昼過ぎまで二度寝するところだが、始まったばかりの初期研修医には許されない。二度寝の誘惑になんとか抗い、水だけ飲んで家… 2016/06/13 事件・話題
Episode 1 ディーゴ誕生(第5話) 「全く無事じゃない。大失敗だ!」 今日は金曜日。金子教授がカテーテルを実施する日だ。症例は2例の予定だったが、1例に変更されている。 2016/06/06 循環器
Episode 1 ディーゴ誕生(第4話) 初期研修医が突然の暴露 研修医になって3日目を迎えた。今日は外来診察に同席することになった。陪席の組み合わせは、僕が金子教授、ジョージが岸田先生、レイカが近藤先生だ。「陪席」とは、「身分の高い人と同席すること」であり、学生や研修医が外来の部屋の端っこに座って偉い先生の外来を見学する。大学病院ではよく… 2016/05/30 循環器
Episode 1 ディーゴ誕生(第3話) やはり起きてしまった合併症 4月12日火曜日。朝8時に僕が病棟に到着した頃には、ジョージとレイカは既にカンファレンス室で心臓カテーテルの本を読んでいた。病棟業務を済ませ、9時に3人でカテーテル室に向かった。火曜と金曜は金子教授のカテーテル担当日だ。最近合併症が続いているため、緊張感が重く漂っている。今日の症… 2016/05/23 循環器
Episode 1 ディーゴ誕生(第2話) 嵐の前の静けさ…循環器内科研修スタート 4月11日月曜日。今日は循環器内科での研修初日だ。僕たち研修医同期3人は1階の売店で朝6時45分に待ち合わせ、循環器病棟に向かった。カンファレンス室は、まだパラパラとしか人がいない。僕は、菓子パンを食べながら電子カルテを開いている宮沢を見つけた。… 2016/05/16 循環器
高校レベルの化学知識で気軽に楽しめるミステリー 喜多喜久『化学探偵Mr.キュリー』 おお、化学系の准教授が謎を解く話か。……それって東野圭吾の「ガリレオ」の化学版かしら。そんなことを思いつつ、折り返しの著者略歴を見たら、薬学系研究課程の修士だそうで。ぺらぺらめくって、購入した。… 2016/02/03 医薬品
連載10回記念 【小説】皮膚科医は見た!毛染め報道の嘘と実 原稿催促のメールを送信してため息をついた。催促をオブラートのように隠す文章も上手くなったと先輩に褒められたが、ちっとも嬉しくない。川谷英里は迷っていた。髪をもう少し明るい色に染めたい――。別段深い理由もないのだが、強いて挙げれば来週の同窓会のためだろうか。学生時代から自他と… 2016/01/20 皮膚科
熊谷さんと原崎さんが語った?薬剤師が登場する小説 『ニーナの羅針盤』(藤村美千穂) ちょっと待ってくれ。ぼんやりルーチンこなしてるだけで月50万とボーナスが入るって、どこの病院だ。がっつり当直は入るし、土日当番で休日返上のところもあるぞ。それでも額面は50万に及ばない……。 2016/01/08 コメディカル
臨床推論の面白さを味わえるミステリー小説 医師やコメディカルの皆さんへお薦めの本を紹介します。『ドクター・ホワイト』(角川書店)は、新聞社の出版部に勤務する主人公が、早朝の公園で出会った謎の少女の素性を解明していくミステリー小説です。なぜかこの少女は類まれなる臨床推論の能力を持っていて、主人公の知人の病院を舞台に数… 2015/12/07 事件・話題
リアル感が魅力、医師が書いたミステリー小説 知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』 医者ものの小説か。表紙が漫画絵だし、中高生向きかな、それともラノベかな。そう思いながら購入した。 2015/10/21 コメディカル
「教授になりたくない医師が9割」って本当? 少し前の話になるが、『教授はつらいよ』という記事を担当した。医学部教授と言えば、「絶対的な権力を握っている」「派閥争いの勝者」というイメージが先立つが、実際には多くの教授が医局員に気を配りながら様々な管理業務を抱え、収入は激務に見合うものとは言い難い――。取材からは、そんな… 2015/06/29 医師のキャリア
インタビュー 著者に聞く 医療者は自然死を邪魔するな 高齢者は「あの世行き」の準備を 『大往生したけりゃ 医療とかかわるな』中村仁一 今年1月末の発行で、6月には50 万部に到達したそうです。今、高齢者医療のあり方が、政策や医療提供の側面から問われていますが、一般の人たちの関心も相当高まっているという証しではないでしょうか。… 2012/08/03 医師の職場環境
葬儀にも自己決定の流れ―『葬式は、要らない』を読む 先日、最近ベストセラーになっている島田裕巳氏の『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)を読みました。葬儀社の広告などに表れている最近の葬式の傾向を、宗教学者が日本の宗教史を踏まえてしっかりと分析しています。島田先生の分析は、以下のようなものです。… 2010/04/30 事件・話題
貧しさから脱出しようと努めないことは、恥である 今、日本の医療が、そして日本そのものが崩壊しようとしています。その背景には、医療・福祉・教育という、人間が生きていくために必要不可欠である社会資本を国がないがしろにしてきた歴史がある、と私は分析してきました。しかし、残念ながら本ブログで「いのちの山河~日本の青空II~」を取り… 2010/04/22 事件・話題
日経メディカル2009年6月号「この人に聞く」(転載) 「名医」ではなく「良医」を書きたかった 帚木 蓬生(作家、医師) 私のこれまでの作品は、医の倫理や、先端医療の問題点などをテーマとした長篇のサスペンス小説が中心でした。この春、新潮社から刊行した『風花病棟』は、短篇集であること、そして等身大の医師の姿や人生の有り様を描いた点で、異色と言えるかもしれません。… 2009/06/23 事件・話題