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2006.03.22

癌研、経口で毒性も低いPI3キナーゼ阻害剤の詳細を公表

 財団法人癌研究会癌化学療法センター分子薬理部部長の矢守隆夫氏らは、全薬工業と共同で開発した経口で毒性も低く効果のあるPI3キナーゼ阻害剤ZSTK474の詳細をこのほど明らかにした。

 PI3キナーゼは発がんやがんの生存、増殖、転移などに重要な役割を果たしていることから、抗がん剤の有力な標的とされているが、毒性が低く経口で有望な化合物は今まで臨床入りしていない。ZSTK474は初めてのわが国発の低分子分子標的抗がん剤になる可能性がある物質。PI3キナーゼ阻害物質としては、毒性が強いために臨床開発が断念された化合物であるLY294002と同様にATP結合ポケットに結合して効果を発揮するが、LY294002よりもin vitroの実験で強い阻害活性を示した。成果の詳細はJournal of the National Cancer Institute誌2006年4月19日号に掲載される。

 研究グループが同定したZSTK474は、最初からPI3キナーゼ阻害剤として探索されたものではない。2000以上のトリアジン誘導体を合成し、細胞レベル、実験動物レベルで強い抗がん効果を見いだした。それを矢守氏の39種類のがん細胞株パネルにかけて、どのようながん細胞株に効果を与えるかパターンを調べたところ、PI3キナーゼと同様な効果のパターンが得られたことから、PI3キナーゼ阻害剤である可能性が示された。そして、実際にPI3キナーゼを阻害する効果、PIP3の産生を阻害する効果をin vitroで確認した。また、in vitroとin vivoの実験からPI3キナーゼの下流のシグナル伝達経路を阻害することも確認した。

 LY294002は1μMの濃度でPI3キナーゼの活性を4.7%減少させるだけだが、ZSTK474は1μMの濃度で44.6%も減少させる効果を持つ。またPI3キナーゼの阻害活性が異なるZSTK474の誘導体を作製したところ、阻害活性の強さに比例してがん細胞の増殖を抑えることができた。マウスにがん細胞を移植した系でもがん細胞の増殖を抑制することを確認した。しかし、マウスの体重減少は見られず骨髄の状態も対照群と同様で毒性が低いことが示された。(横山勇生)