2006.02.27

週3回以上の運動で認知症リスクが3割減

 高齢者の定期的な運動はやはり認知症の予防に有効なようだ。60代以上の高齢者1740人を平均6年間追跡して、運動の習慣と認知症発症の関連を調べた前向き観察研究の結果、週3回以上定期的に運動する人ではそうでない人に比べ、認知症全体とアルツハイマー病の発症リスクが約3割、有意に減少することが確かめられた。米Washington大学のEric B. Larson氏らの研究成果で、詳細は、Annals of Internal Medicine誌2006年1月号に報告された。

 これまでにも長期にわたる観察研究や無作為割付試験で、運動が高齢者の認知機能の向上に役立つ可能性が示され、また、運動量が多いと加齢による海馬組織の減少は少ないと報告されている。Larson氏らの研究グループは、認知症発症率リスクに着目した。

 対象は米ワシントン州シアトル在住の認知障害がない66歳以上の高齢者1740人。認知機能スクリーニング検査(CASI)スコアが25パーセンタイル超(CASIスコアが91-100)の人を登録した。CASIスコア86は、MMSE(Mini Mental State Examination )25〜26に相当する。ベースラインで、運動の頻度、認知機能、喫煙、認知症の危険因子となるアポリポ蛋白質E4の遺伝子型などを調べた。

 運動については、過去1年間に行ったウォーキング、エアロビクス、水泳、ストレッチなどの頻度を尋ねた。今回の対象者には、運動を積極的に行っている人が多かったため、週3回以上を定期的な運動と判断した。

 平均6.2年の追跡期間中、158人が認知症を発症した。そのうち107人がアルツハイマー病、33人が脳血管性認知症、18人がその他の認知症だった。

 発症率は、ベースラインで週3回以上運動していた人で1000人年あたり13人、運動頻度が週3回未満の高齢者では1000人年あたり19.7人で、年齢と性別で調整したハザード比は0.62(p=0.004)となった。交絡因子として、アポリポ蛋白質E4の遺伝子型、糖尿病、高血圧、心血管疾患、自己申告の健康状態、身体機能、鬱、認知機能で調整したところ、ハザード比は0.68で有意(p=0.030)となった。

 アルツハイマー病発症者に限定した分析でも同様の結果となった。年齢と性別で調整した運動によるアルツハイマー病ハザード比は0.64(p=0.031)となった。ただし、交絡因子で調整したハザード比は0.69(0.45-1.05、P=0.081)となった。運動による認知症リスク減少は身体機能が低い人でより大きかったが、運動量の増加とリスク減少の間に、用量-反応関係は見られなかった。

 今回は、運動の頻度のみを指標とし、運動の強度や時間は分析に加えていないが、得られた結果は、定期的な運動が認知症およびアルツハイマー病の発症を遅らせることを示した。近年、複数の無作為割付試験で、既にアルツハイマー病を発症した患者にも定期的な運動が有益であることを示す結果が得られている。

 アルツハイマー病その他の認知症は、高齢化が進む先進国においては深刻な問題だ。認知症の発症を遅らせ、リスクを減らす戦略が確立されれば、高齢者の生活の質は高まり、余命は延び、医療費は抑制でき、社会的な負担は減るはずだ。

 本論文の原題は「Exercise Is Associated with Reduced Risk for Incident Dementia among Persons 65 Years of Age and Older」。概要はAnnals of Internal Medicine誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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