2006.02.23

酸化ストレスが低いのに抗酸化ビタミンを長期間摂取すると心血管系に有害

 健康な人がビタミンEやCなどの抗酸化ビタミンをのむと、むしろ体内の酸化ストレスを高めてしまう、健康維持のためにサプリメントを服用している人にはちょっとショッキングな研究成果が報告された。

 体内で酸化ストレスが高まっている場合、抗酸化サプリメントは血管内皮機能に利益をもたらすことが報告されている。が、正常な状態で摂取した場合の影響については、ほとんど情報がなかった。米Mayo Clinic College of MedicineのDaniele Versari氏らは、正常なブタにビタミンEとCを12週間投与し、心血管系への影響を調べた。その結果、これらの抗酸化ビタミンが、動脈壁における酸化ストレスをむしろ高め、心筋血流と内皮機能を損なうことが明らかになった。詳細は、Hypertension誌電子版に2006年1月30日に報告された。

 血管内皮の酸化ストレスは、アテローム性動脈硬化の発症と進行に重要な役割を果たす。ヒトを対象とする観察研究の多くが、抗酸化ビタミンの摂取量が多いと心血管疾患リスクは低いことを示している。しかし、無作為割付試験で、冠動脈と頸動脈のアテローム硬化の予防に抗酸化ビタミンが有効であることを示した報告はない。同様に、臨床イベントに対する抗酸化ビタミンの影響を調べた大規模な試験も、多くが結論を得ていない。それらの中で、血液透析を受けている患者と、冠動脈疾患患者を対象とした研究では、抗酸化剤の部分的な利益がみられている。

 一方、最新のメタ分析の結果は、高用量のビタミンEを慢性疾患の患者に投与すると、総死亡率が上昇する可能性を示した。in vitro試験では、酸化活性が低い状況では、抗酸化ビタミンは、予想に反して酸化促進作用を示すことが明らかになっている。

 これらの情報は、抗酸化ビタミンの作用は、内在する酸化ストレスのレベルによって異なることを示唆している。すなわち、酸化ストレスが上昇している場合には、抗酸化ビタミンは利益をもたらすが、酸化ストレスの上昇がない人々に非選択的に投与しても、利益はほとんどないか、逆に悪影響が現れる可能性が考えられる。

 著者らは先に、ブタ高血圧モデルと高コレステロール血症モデルにビタミンE(100IU/kg/日)とビタミンC(1g/日)を投与すると、酸化ストレスが減少し、内皮機能および心筋血流が正常化することを示した。そこで今回は、正常なブタに同じ量のビタミンを投与し、心血管系への影響を評価した。

 正常な若いブタ6頭に、通常のエサに加えてビタミンEとビタミンCを12週間摂取させた。対照群7頭には通常のエサのみを与えた。

 まず、薬理学的負荷試験としてアデノシンまたはドブタミンを静注して、左室前壁の心筋血流を測定したところ、ベースラインでは両群間に差はなかったが、12週後におけるアデノシン投与後の血流量は、ベースラインと比べ、ビタミン群では10.1±4.5%、対照群53.4±5.2%(p<0.01)となった。ドブタミン投与でも、ビタミン群78.4±8.1%、対照群193.0±39.0%(p<0.05)となり、いずれもビタミン群で血流量が少なかった。

 微小血管の機能のパラメータとなる血管透過性指数をベースラインと比較したところ、アデノシン投与後のビタミン群が48.8±5.1%、対照群が11.2±4.6%(p<0.01)、ドブタミン投与後では59.9±13.6%と14.8±7.3%(p<0.01)で、ビタミン群で血管透過性が高かった。対照群では、用いられた負荷試験薬が異なっても透過性指数に有意差はなかった。

 その後、心臓を摘出して冠動脈を切開し、血管壁の等尺性張力を測定した。内皮特異的な血管拡張剤であるブラジキニンとサブスタンスPで処理し、拡張反応を見た。サブスタンスPでは、ビタミン群47.8±11.8%、対照群91.3±3.3%(p<0.01)、ブラジキニンに対する拡張反応は、ビタミン群62.0±6.5%、対照群95.4±1.6%(p<0.01)で、ビタミン群で反応は低かった。内皮非特異的な血管拡張剤パパベリンで処理した場合の反応には有意差はなかった。

 ビタミン群では、対照群に比べ、組織の酸化障害の指標である二トロチロシンが冠動脈壁に多かった。活性酸素の前駆体であるスーパーオキサイド・アニオンの局所的な産生量が有意に多いことが判明した。また、内皮の一酸化窒素合成酵素(NOS)については、モノマーの発現量は同等だが、ダイマーを形成して活性型となった酵素はビタミン群で少なかった。NOの産生が減少すると、活性酸素が増加することが知られている。

 これらの結果から、高用量の抗酸化ビタミンを正常なブタに長期間投与すると、心筋血流と内皮機能が損なわれること、この過程には、動脈壁での酸化ストレスの上昇とNOSダイマー形成の阻害が関与する可能性が示された。酸化ストレスが上昇していない状態で過剰な抗酸化ビタミンを投与すると、体内の酸化還元平衡の不均衡が生じて、健康だった心血管系に悪影響が及ぶと考えられた。

 今回ブタに投与されたビタミンの量は、抗酸化作用を期待してわれわれが摂取する量とほぼ同じだ。今後、健康なヒトを対象とした試験で今回の結果を確認する必要があるだろう。一方で、酸化ストレスが増加している患者は、抗酸化剤の投与による利益が期待できることから、In vivoの酸化ストレスを反映する信用できるマーカーを用いて、抗酸化ビタミン投与を開始すべきかどうかを決定すべきだ、と著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Chronic Antioxidant Supplementation Impairs Coronary Endothelial Function and Myocardial Perfusion in Normal Pigs」。アブストラクトはHypertension誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2004.10.12 抗酸化サプリメントは消化器癌予防に有効ではない:系統的レビューとメタ分析から


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