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2006.02.16

【日本消化管学会:ワークショップ1】消化管運動機能の生理と薬物治療

 このワークショップで、長崎大消化器外科の虎島泰洋氏は、食道や胃に存在するGABAB受容体について報告した。抗けいれん薬として使われているGABAB受容体作用薬のバクロフェンは、下部食道括約筋の弛緩を抑制する効果があり、逆流性食道炎の治療薬に使える可能性がある。しかしバクロフェンは脳血管バリアを通過するため、中枢経由で胃酸分泌を促進するという報告もあり、本当に治療成績が向上するかどうか欧米でも臨床試験中だという。

 虎島氏らは、癌の切除標本から癌細胞のない部分を取り出しRT-PCR法(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)と免疫染色法を用いて、GABAB受容体の分布を調べた。その結果、食道噴門部・胃吻門部・胃体部のすべての粘膜層と筋層にGABAB受容体の発現が見られた。また、GABAB受容体はR1・R2というサブユニットが結合した二量体で、R1にはaからgまで7種類のサブタイプがある。消化管では脳に比べてサブタイプの1c、1e、1fが強く発現しており、中枢とは違う作用を受け持っている可能性があることを示唆した。

 鹿児島大大学院医歯学総合研究科の浅川明弘氏は、成長ホルモン分泌促進ペプチドで摂食促進作用を持つことが知られているグレリンと、脂肪酸を持たない状態のデスアシルグレリンの機能について、マウスでの実験結果を発表した。脂肪酸を持つグレリンをマウスの脳室や静脈から投与したところ、胃排出を亢進し摂食促進作用を示した。一方、デスアシルグレリンを同様にマウスに投与したところ、中枢からでも末梢からでも胃排出を遅延させ、摂食抑制作用を示した。浅川氏は、「通常の胃ではデスアシルグレリンの方が多く存在し、胃内でこのバランスを変わることにより消化管運動が変化するのではないか」と指摘した。

 大阪市大消化器機関制御内科学の富永和作氏は、胃の貯留能と排出能を評価する新たな試みを発表した。99mテクネチウム-DPTAを混入したホットケーキを作成、これを患者に食べてもらい、経時的にシンチグラフィーで胃の運動機能を測定するというものだ。胃全体と近位側の放射活性を比較することにより、近位側の拡張による貯留能と排出能を検討する指標になる。ローマ2基準を満たす機能性胃腸症患者52人で測定したところ、排出遅延が42.3%、排出亢進は15.4%、貯留能障害は44.2%にみられたという。運動不全型では約半数に排出遅延がみられたが、非特異型では逆に排出亢進も3割に見つかっている。今後の症例の蓄積によりさらに詳細な検討が可能になりそうだ。(平田尚弘)