2006.02.03

膣錠や膣クリームに乳がん治療効果を打ち消す恐れ

 乳がんの術後補助療法としてアロマターゼ阻害剤を投与されている女性には、しばしば深刻な膣萎縮が生じる。症状改善には一般に、エストロゲンの膣錠や膣クリームを用いるが、新たな研究の結果、こうした局所ホルモン剤の使用によって血中のエストロゲン濃度が上昇し、アロマターゼ阻害剤の効果を打ち消す可能性が明らかになった。英Royal Marsden Foundation NHS TrustのAnne Kendall氏らの研究成果で、詳細は、Annals of Oncology誌電子版に2006年1月27日に報告された。

 閉経後の女性の約4割が、膣萎縮による乾燥、痛み、尿失禁、性交痛などの症状に苦しむ。閉経後の女性でアロマターゼ阻害剤の投与を受けている乳がん患者の場合、アロマターゼ阻害剤のエストラジオール産生抑制作用により、これらの症状はさらに厳しいものになる。

 現在用いられている第3世代のアロマターゼ阻害剤は、アロマターゼを97%以上阻害でき、血清エストラジオール値は、通常の約20pmol/Lから3pmol/L以下(高感度法の検出限界以下)に下がる。副作用を調べた研究では、第3世代のアナストロゾールを投与した場合には、全体の16.3%に膣の乾燥が、17.8%に性交痛が見られる。

 これらの患者には通常のエストロゲン補充療法は適用できないため、錠剤、リング、クリームなどによるエストラジオールの局所投与が行われる。それらの全身への影響は少ないと考えられているからだ。

 しかし、実際に全身性の影響を調べた研究はなかった。著者たちは、アロマターゼ阻害剤を用いた術後補助療法を受けている乳がん患者で、膣萎縮による症状が深刻であるために、「Vagifem」の使用を開始した6人(平均年齢52歳)と、エストラジオール膣クリーム「premarin」の使用を開始した1人を対象に、血清エストラジオール値の継続的な測定を行った。

 レトロゾール投与を受けていた3人とアナストロゾールが投与されていた3人の計6人で、ベースラインのエストラジオール値は5pmol/L以下だった。ステロイド系アロマターゼ阻害剤であるエクセメスタンを使用していた1人の患者では、エストラジオール値は7.4pmol/Lと高かったが、著者たちによると、エクセメスタンがエストラジオール検出に影響を与える可能性があるという。

 膣錠またはクリームの使用開始から2、4、7-10、12週後に血清エストラジオールを測定したところ、2週目には血清濃度が大きく上昇し、平均72pmol/Lになった。4週後には、多くの女性で35pmol/L未満(中央値は16pmol/L)に低下したが、2人については、7-10週目に再び有意に上昇、219pmol/Lと137pmol/Lになった。いったん上昇したエストラジオール値が、12週時にベースラインのレベルに戻ったのは2人だけだった。

 血清エストラジオール値の上昇は、アロマターゼ阻害剤の治療効果を低減する。エストラジオール膣錠やクリームの使用は、AI治療を受ける女性には禁忌とすべきだ、と著者たちはいう。例外は、高感度法で血清エストラジオール値を監視し、上昇がないことを確認しながら用いる場合だ。

 「Vagifem」の使用により膣上皮の成熟がおこり、その後、エストラジオールの吸収が減少するという報告があった。タモキシフェンは、膣上皮に対してはエストロゲン様の作用を示すという報告が複数ある。したがって、膣萎縮の症状が深刻なときにはエストラジオール膣剤またはクリームとタモキシフェンを併用し、症状が軽快したらアロマターゼ阻害剤の治療に戻す方法が有効かもしれない、と著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Caution: Vaginal estradiol appears to be contraindicated in postmenopausal women on adjuvant aromatase inhibitors」。アブストラクトはこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.8.22 閉経後の乳癌患者に対する術後補助療法、タモキシフェンからアナストロゾールへの切り替えは再発リスクを下げる


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