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2006.01.25

あお向け寝推進でSIDSは激減、ソファーで添い寝の危険性が新たに浮上――英国の研究

 英国では、1991年に始まったあお向け寝推進キャンペーン以降、乳幼児突然死症候群(SIDS)が4分の1以下に激減した。年間出生数約1万人のエイボン州における20年間の調査研究から発症傾向の変化を調べたところ、経済的に恵まれない家庭の子どもが74%を占め、半数が添い寝の状況で死亡していた。なかでもソファーで添い寝している際の症例が1%から11%に増加していることが指摘された。英Bristol大学のPeter S Blair氏らの研究成果で、詳細はLancet誌電子版に2006年1月18日に報告された。

 SIDSは、乳幼児の予期せぬ死亡が発生し、剖検、医療歴、死亡現場の状況などから死因を十分に説明できないケース、と定義されている。多くは生後8カ月までに発生、3〜4カ月齢が最も多い。リスクが高いのは、男児、早産児、低出生体重児、仰向け以外の姿勢での睡眠とされている。

 英エイボン州では、1984年から、乳幼児に予測できない突然の死が発生した場合、直後に小児科医が家族に面接し、睡眠環境に影響する要因を中心に、十分な情報を収集する活動が続けられてきた。同州の年間出生児数は約1万人。20年間(1984〜2003年)に369人の予期せぬ乳幼児死亡のデータが収集された。うち300人がSIDSと判定された。

 あお向け寝キャンペーン後、エイボンではSIDSの発生件数が75%以上減少した。発生に関わる要因を比較するため、1984年から2003年まで5年ごとに区切り、全SIDS児に占める、特定のリスクを持っていた乳幼児の割合を調べた。

 その結果、あお向け以外(うつぶせまたは横向き)の姿勢で寝ていた乳幼児の割合は、1984〜1988年の98%から、1999〜2003年には39%にまで減少した。

 一方、親が添い寝していた子供の割合は12%から50%まで増加(傾向のp<0.0001)していた。しかし、添い寝によるSIDSの実数は半減(p=0.01)しており、割合が増加した原因の1つは、あお向け寝キャンペーンが、ベビーベッドで眠る乳幼児のうつぶせ寝を減らし、死亡を抑制したことにあると考えられた。なお、ベッドでなくソファーで親と寝ていたSIDS児の割合は、1%から11%に増加していた。

 SIDSが発生した家庭を社会経済的な状態を基に8つに分類し、どの階級の家庭で発生頻度が高いかをキャンペーンの前後で比較した。キャンペーン後、その割合が大きく増えていたのは失業家庭だった。1984〜1988年は28%だが、1999〜2003年には47.9%を占めていた。失業家庭を含む社会経済的に恵まれない家庭に属する子供の割合は、全SIDS児の47%から74%に上昇した(傾向のp=0.003)。同様に、妊娠中の母親の喫煙(p=0.0004)、シングルマザー(p<0.0001)、母親が20歳未満(p=0.03)のSIDS児の割合が有意に増加していた。これらは経済的に恵まれない家庭に多く見られる要因だ。

 早産児の割合も12%から34%に上昇していた(p=0.0001)。著者たちは、産科では引き続き早産児に横向き寝を適用していることが関係している可能性を指摘している。

 4人以上の子供がいる家庭の割合が全SIDS児の14%から36%に増加した反面、長子のSIDSが18%から33%に増えていた。母乳栄養だったケースは50%から26%に半減していた。
 得られた結果は、SIDSに関係する要因の変化を明らかにした。近年では、SIDSの半数は添い寝で発生しており、添い寝を避けるよう勧告している国もある。著者たちは、ソファーで親が添い寝することは極力避けるべきだという。また、多くのSIDSは恵まれない家庭に起きている。予防策を練るためには、社会経済的状態が同等の家庭に関するデータ、特に乳幼児の睡眠環境に関する詳細な情報を入手し、比較して、関係する要因について理解を進める必要があると著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Major epidemiological changes in sudden infant death syndrome: a 20-year population-based study in the UK」。アブストラクトはLancet誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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