2006.01.19

肺移植後のシクロスポリン吸入治療で拒絶反応を効果的に抑制、死亡率は5分の1に

 肺移植後の3年生存率は現在でも55%しかなく、心臓、腎臓、肝臓移植の場合に比べて予後が良くない。死亡の原因は、主に慢性拒絶反応による閉塞性細気管支炎だが、これを予防、治療することは難しい。米Pittsburgh大学のAldo T. Iacono氏らは、肺移植後の患者に、通常の免疫抑制治療とともにシクロスポリン吸入を2年間行うと、偽薬吸入群に比べ、慢性拒絶反応リスクは3分の1、死亡リスクは5分の1になることを明らかにした。詳細は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2006年1月15日号に報告された。

 これまで、肺移植の動物モデルを使った実験で、シクロスポリン吸入は肺組織におけるシクロスポリン濃度を高く維持でき、毒性上昇なしに拒絶反応を抑制できることが示されていた。また、ヒト肺移植患者で、抗療性の急性および慢性拒絶反応が見られる症例にシクロスポリン吸入を行った研究では、拒絶反応を示す臨床マーカーのレベルが改善され、生存率も向上したと報告されている。そこで著者らは、予防的なシクロスポリン吸入が、肺移植患者の予後を改善できるかどうか調べる、二重盲検の無作為割付比較対照試験を実施した。

 移植から42日未満の、片肺または両肺の移植を受けた18歳以上の患者を登録。治療群の28人には、シクロスポリン・パウダーをプロピレン・グリコールと混合、エアロゾル化したものを、ジェット・ネブライザーを用いて吸入投与した。偽薬群30人にはプロピレン・グリコールのみ吸入投与した。当初10日は毎日、その後は週3回吸入を移植後2年間実施した。

 シクロスポリンの用量は100mgで開始、300mgまたは最大耐用量まで増量した。通常の全身性の免疫抑制治療(タクロリムス、アザチオプリン、プレドニゾンなど)は両群に行った。主要エンドポイントは組織学的急性拒絶反応、二次エンドポイントは慢性拒絶イベントと全生存率に置かれた。追跡は、最後の患者の登録から2年後まで実施した。追跡期間は24〜56カ月だった。

 生検によって評価したグレード2以上の急性拒絶率は、治療群では、患者1人あたり年間0.44エピソード(95%信頼区間0.31-0.62)、対照群では0.46エピソード(0.33-0.64)(ポワソン回帰分析によるp=0.87)で両群の間に有意差はなかった。

 次に、慢性拒絶反応なしの生存をKaplan-Meier 法を用いて分析した。肺活量に基づく評価では、慢性拒絶反応は、治療群では10イベント、偽薬群では20イベント発生、相対リスクは0.38(0.18-0.82、p=0.01)となった。閉塞性細気管支炎を示す組織学的マーカーを用いた評価では、治療群6イベント、偽薬群19イベントで、相対リスクは0.27(0.11-0.67、p=0.005)だった。慢性拒絶反応に対する治療を受けた患者は、治療群2人、偽薬群8人(p=0.05)。

 生存率は、シクロスポリン吸入群で高かった。治療群の死亡は3人、偽薬群は14人で、多変量調整後の相対リスクは0.20(0.06-0.70、p=0.01)。両群の間で、腎毒性の影響や日和見感染、入院などの副作用の発生件数には有意差は見られなかった。

 シクロスポリン吸入は、急性拒絶反応には影響しなかったが、慢性拒絶反応を抑制、生存率を改善した。今回は、1医療機関で行われた小規模な研究だったため、効果を確認する大規模な研究が必要だと著者たちは述べている。

 本論文の原題は「A Randomized Trial of Inhaled Cyclosporine in Lung-Transplant Recipients」。アブストラクトはNEJM誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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