日経メディカルのロゴ画像

2005.12.21

α-トコトリエノールのエーテル誘導体が肺がん細胞で抗がん効果を発揮

 α-トコトリエノールのエーテル誘導体は、肺がん細胞の細胞周期をG1期で止め、同時にアポトーシスを引き起こすことにより、細胞増殖を抑制する効果を示すことが明らかになった。国立健康・栄養研究所 食品表示分析規格研究部の矢野友啓室長が、国立健康・栄養研究所の季刊誌「健康・栄養ニュース 第14号」で報告した。

 トコトリエノール類はビタミンEの成分の一つで、抗酸化作用をもつとともに、がん細胞増殖抑制作用もあるといわれている。ビタミンEの代名詞ともいえるトコフェロールに対し、40〜50倍の抗酸化力がある。ただトコトリエノールはその強い抗酸化作用のために生体内では酸素と結合して分解されやすく、抗がん作用を十分に発揮しにくいとされていた。

 そこで研究グループは、分子の抗酸化力をもつ部分をエーテル結合で働かないようにし、生体内で安定かつ抗酸化作用をもたない誘導体6-O-carboxypropyl-α-tocotrienolを作成。Ras遺伝子に変異のある肺がん細胞において、この誘導体の抗がん作用を、α-トコフェロールのエーテル誘導体、およびα-トコトリエノールと比較した。

 その結果、α-トコトリエノールのエーテル誘導体は、α-トコフェロールのエーテル誘導体やα-トコトリエノールが抗がん作用を示さない40μM以下の濃度でも、濃度依存的に細胞増殖抑制効果を示した。このことから、α-トコトリエノールのエーテル誘導体は、がん細胞に比較的選択的に働く新規の抗がん物質であることが示唆された。

 ただし、この研究はあくまでも細胞レベルの結果であり、動物やヒトにおける安全性などはまだ確認されていない。市場にはトコトリエノールのサプリメントなどが出回っているが、「動物実験ではある程度の抗がん作用はあるようだが、ヒトの体内でどの程度の血中濃度が維持されるかなどはわかっていない」と矢野室長は話している。

 本報告は、国立健康・栄養研究所のWebサイトで閲覧できる。矢野氏らの研究グループによる原著論文の原題は「Induction of cytotoxicity in human lung adenocarcinoma cells by 6-O-carboxypropyl-alpha-carboxypropyl-alpha-tocotrienol, a redox-silent derivative of alpha-tocotrienol」。アブストラクトは、International Journal of Cancer誌Webサイトのこちらまで。(八倉巻尚子、医療ライター)