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2005.12.09

米国エネルギー省の研究所、頭蓋骨のX線分析でベートーベンの鉛中毒を確認

 米国エネルギー省の国立アルゴンヌ研究所(イリノイ州アルゴンヌ)は12月6日、作曲家ベートーベンの頭蓋骨について、X線蛍光分析を行い、多量の鉛を検出したと発表した。米Pfeiffer Treatment Centerの主任研究者でベートーベン研究プロジェクト長のBill Walsh氏は、ベートーベンが鉛中毒で苦しんだことを示す確固たるエビデンスを得た」としている。これまでの別の研究で、ベートーベンの髪の毛を分析した結果、鉛中毒の可能性が示されていたが、それを確認する結果となった。

 Walsh氏らは、ベートーベンの頭頂骨と、その対照サンプルとして同時代に生きた人の頭頂骨について、アルゴンヌ研究所の第3世代大型放射光施設であるAPS(Advanced Photon Source)を利用して、“西半球で最も高い鮮鋭度が得られる”X線による分析を行った 注1)。その結果、ベートーベンの骨からは対照サンプルに比べ、多量の鉛が確認できた。

 ベートーベンの腹部症状や検死の結果は、鉛中毒の所見に合致している。一方で、鉛中毒は聴覚消失の原因として報告はあるものの比較的まれであることから、鉛中毒がベートーベンの聴覚消失の原因かどうかは不明という。鉛が頭蓋骨に見つかったことから、研究者らは、ベートーベンの鉛への暴露は長年にわたるものとみなしている。なお今回の分析では、カドミウムや水銀は検出されなかった。

 アルゴンヌ研究所のプレスリリースはこちらまで。(當麻 あづさ、医療ジャーナリスト)


注1)第3世代大型放射光施設は、アルゴンヌ研究所のAPSのほか、フランスのグルノーブルにある欧州共同施設のESRFと日本の理化学研究所播磨研究所(兵庫県西播磨)にあるSpring-8の3つがある。このうち最も強力なのが8Gevを誇るSpring-8。