2005.10.31

術中術後に80%酸素を投与すると感染リスクが半減する、スペインの研究

 これまで、術中と術後に、通常の吸入気酸素濃度(FIO2)30%でなく80%を用いると、術後創傷感染リスクは半減するという報告 注1)と、逆に倍加する 注2)という報告があった。スペインValencia大学付属病院のF. Javier Belda氏らは、大腸手術を受ける患者を対象にFIO2 80%の術後感染予防効果を調べたところ、感染リスクが54%減少することが示された。詳細は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌2005年10月26日号に報告された。

 術後の創傷感染は入院を長引かせ、医療費増をもたらす。生体の感染防御の主役は好中球だ。その酸化殺菌効果は組織の酸素分圧に依存する。したがって、酸素を補充すれば、感染リスクは減少すると考えられる。

 Belda氏らは、二重盲検の無作為割付比較対照試験を実施した。スペイン国内14病院で2003年3月1日から2004年10月31日にかけ、選択的な大腸手術を受けた18〜80歳の患者291人が対象。FIO2 30%(143人)または80%(148人)に割り付け、術中と術後の6時間、酸素マスクを用いて投与した。麻酔治療と抗生物質投与は全患者で標準化。術後14日間の創傷感染は米疾病管理センター(CDC)の基準に基づいて診断した。

 あらゆる手術部位感染(SSI)を主要エンドポイントとし、2次エンドポイントとして、腸の機能の回復、固形食品に対する忍容性、歩行が可能になるまでの期間、抜糸時期、入院期間などを設定した。

 手術部位感染が見られたのは、30%群35人(24.4%)、80%群22人(14.9%)(相対リスク0.61、95%信頼区間0.39-0.98)。多変量調整後、感染リスクとの間に有意な関係が見られたのは、高FIO2と呼吸器系疾患併存のみ。FIO2 80%群では手術部位感染リスクは54%減少(相対リスク0.46、0.22-0.95)、呼吸器疾患が併存する患者の手術部位感染リスクは3.23倍(相対リスク3.23、1.18-8.86)だった。すべての2次エンドポイントには有意差は認められなかった。

 なお、感染を起こした患者は、そうでない患者を比べ、歩行可能になるまでの期間(p=0.008)、抜糸までの期間(p=0.007)、入院期間(p=0.001)が有意に長かった。

 著者たちは、腹部手術を受けた患者に対する高FIO2投与が感染リスクを2倍にすると報告した研究の問題点をいくつか指摘している。たとえば、被験者が不均一で、高FIO2と低FIO2群の間で、手術に要した時間や体重などに違いがあり、高FIO2群にリスクが高い患者が多かったこと、感染の診断が後ろ向きに行われたこと、などを挙げている。

 一方、リスクが2分の1との報告は、大腸手術を受ける患者に術中および術後2時間、FIO2 80%を投与した試験の結果に基づく。リスク減少レベルが今回とほぼ同等であることから、著者たちは、術後の高FIO2投与は2時間でも十分かもしれないと述べている。

 低コスト、低リスクの酸素補充が、大腸手術の術後ケアの向上をもたらすことが改めて示された。他の大規模な手術にも有効かどうかの検討が待たれる。

 本論文の原題は「Supplemental Perioperative Oxygen and the Risk of Surgical Wound Infection」。現在、全文がこちらで閲覧できる(PDFファイル)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

注1)Greif Rなど、NEJM 2000;342:161-167
注2)Pryor KOなど、JAMA 2004;291:79-87

■ 関連トピックス ■
◆2004.1.9  「周術期酸素投与による創感染予防」に効果無し、無作為化二重盲検試験で判明


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