2005.09.12

慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬、どちらの先行投与でも差なし CIBIS III試験の結果がCirculation誌電子版に掲載

 アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬は、慢性心不全(CHF)の進行を遅らせ、アウトカムを改善する。β遮断薬を追加すると、有病率と死亡率がさらに35%減少すると報告されている。が、これら2種類の薬剤の適切な投与法、特に投与順序に関する情報はほとんどなかった。スウェーデンLund大学 Malmoe病院Ronnie Willenheimer氏らは、どちらを先に投与しても患者の死亡率と入院率に差はないことを示した。詳細は、Circulation誌電子版に 2005年9月4日に報告された。

 現行のCHF治療ガイドラインは、これまでの知見に基づき、治療はACE阻害薬で開始し、β遮断薬を追加するよう勧めている。これら2種の薬剤の併用が標準治療になっているが、最適の治療レジメンは明らかではなく、用量が不十分だったり、先行投与された薬剤のみが長期間投与されることも少なくない。

 理論上はベータ遮断薬を先行投与した方が利益は大きいという考えもあるが、投与順序の効果に対する影響を評価した研究は、小規模なものが2件しかなかった。そこで著者たちは、どちらを先に投与すべきかを明らかにすべく、CIBIS III試験を実施した。

 欧州、豪州、チュニジアで行われたこの試験は、軽度から中度(NYHA IIまたはIII)のCHFで、左室駆出分画が35%以下、ACE阻害薬、ベータ遮断薬、アンジオテンシン受容体遮断薬の使用歴のない65歳以上の患者1010人を対象とした。

 505 人ずつを無作為にベータ遮断薬ビソプロロールとACE阻害薬エナラプリルに割り付けた。ビソプロロールは1日1回投与で、1.25mgから始めて目標投与量10mg、エナラプリルは1日2回投与で、2.5mgから始めて目標投与量10mg。6カ月後から24カ月までは2剤を併用した。追跡期間の平均は 1.22年。主要エンドポイントは、あらゆる原因による死亡または入院とした。

 2通りの投与法の優越性、非劣性、劣性の判断の定義は以下のように設定された。ビソプロロール先行投与とエナラプリル先行投与を比較した場合に、ハザード比の95%信頼区間の上限がHR1.0より低ければ、優越性が示される。95%信頼区間全体がHR1.0より高ければ、劣性と判断される。95%信頼区間の上限がHR 1.17(両群の絶対リスクの差が5%未満に相当)より低ければ非劣性となる。

 intention-to-treat解析において主要エンドポイントを達成したのは、ビソプロロール先行投与群の178人、エナラプリル先行投与群の186人(絶対差-1.6%、95%信頼区間-7.6から 4.4%、HR 0.94、95%信頼区間0.77から1.16)。したがって、ビソプロロール先行投与の非劣性が示された。

 per-protocol 解析では、主要エンドポイント達成者は、ビソプロロール先行投与群163人、エナラプリル先行投与群165人(絶対差-0.7%、95%信頼区間-6.6 から5.1%、HR 0.97 、95%信頼区間0.78から1.21)。95%信頼区間がHR1.0、HR 1.17を含んでいたので、優越性、劣性、非劣性のいずれにも該当しなかった。

 試験期間中の死亡は、ビソプロロール先行投与群65人、エナラプリル先行投与群73人(HR 0.88、95%信頼区間0.63から1.22)、うち心臓血管系死は55人と56人で同等(HR 0.97、0.67から1.40)。入院は151人と157人(HR 0.95、0.76から1.19)だった。
 単剤投与期間だけで比較しても、主要エンドポイント達成者は、ビソプロロール群109人、エナラプリル群108人(HR 1.02、0.78から1.33)、死亡は23人と32人(HR 0.72、1.42から1.24)、入院は99人と92人(HR 1.08、0.81から1.43)と有意差は認められなかった。

 得られた結果は、ビソプロロール先行投与もエナラプリル先行の場合と同様に、有効で安全である可能性を示した。

 本論文の原題は「Effect on Survival and Hospitalization of Initiating Treatment for Chronic Heart Failure With Bisoprolol Followed by Enalapril, as Compared With the Opposite Sequence. Results of the Randomized Cardiac Insufficiency Bisoprolol Study (CIBIS) III」、概要は、こちらで閲覧できる。 (大西淳子、医学ジャーナリスト)

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