2005.08.29

2003年の記録的熱波による超過死亡、西欧全体で5万人以上 当初予測の2倍上回ることが新たに判明

 2003年8月初旬、欧州を記録的な熱波が襲い、エアコンのない建物に居住する高齢者を中心に、多数の死者が出たことは記憶に新しい。このほど公表された報告によると、熱波による超過死亡の総数は、当初、報告された2万2080人をはるかに上回り、西欧全体で5万人を超える規模だったことが明らかになった。各国の研究成果は、欧州感染症情報月報「Eurosurveillance monthly release」2005年7/8号に掲載された。

 新推計値と当初推計値の格差は、主として新たな地域が算入されたためだ。当初推計値は、フランス、英国のイングランドとウエールズ、イタリアの4都市とポルトガルにおける超過死亡が含まれていた。今回、新たに、スペイン、イタリア全土、ベルギー、スイス、ドイツなどの推計値を算入した。

 その結果、西欧全体では、8月初旬については少なくとも当初予測の5割増であることが判明した。また、熱波は6月以降、複数回来襲していたことから、6〜8月の西欧全体の超過死亡について見ると、当初予測の2倍を超えることが確実になった。

 当時、最も大きな被害が報告されたのはフランスで、8月1日から20日までの間に、1万4800人以上の超過死亡があったと推計されている。しかし、今回報告されたイタリア全土の超過死亡は、2003年6〜9月を2002年同時期と比較した値で1万9780人にのぼり、フランスを上回る被害を出していたことになる。

 各国の報告に共通するのは、超高齢者に犠牲者が大きかった点だ。例えばフランスでは、45〜74歳の超過死亡は20%だったが、75〜94歳では70%、95歳以上では実に120%に達した。また、フランス、ポルトガル、イタリアなどでは女性の超過死亡が男性よりも高かった。

 熱波に対する対策の準備が明暗を分けたと考えられる例もある。フランスのニースとマルセイユでは、熱波による平均気温の上昇などの条件はほぼ同じだったが、超過死亡率は、ニースが53%だったのに対し、マルセイユでは25%と半分以下だった。これについては、ニースの方が超高齢者の人口比率が高い(12.7%対9.7%)ことのほか、マルセイユでは1983年に熱波に見舞われた経験から、熱波に対する緊急対応計画が用意されていたことも、影響していたとしている。

 月報の総論(Editorial)では、今後数十年の間に、同種の災害が繰り返し起きる可能性があるとして、健康施策上の優先課題にすべきだとしている。その理由として、同誌では、(1)人口の高齢化、(2)オゾンなどの大気汚染の影響、(3)地球温暖化を挙げている。

 エアコンが普及し、熱暑に対する警戒情報も充実している日本では、欧州のような被害を直ちに心配しなくてもよいように思われる。しかし、大都市のヒートアイランド現象や地球温暖化の進展、頻発するエルニーニョ現象などの気象変化と、独居高齢者の激増などを考慮すれば、長期的な対応策を練っておく必要はありそうだ。

 Eurosurveillance monthly release 2005年7/8号は全文をこちらで閲覧できる。(中沢真也)


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