2005.03.08

【第29回 九州リウマチ学会速報】 人工膝関節手術時の他家血輸血の回避 術前貯血と回収式自己血輸血の併用が効果的

 片側人工膝関節置換術(TKA)において、ヘモグロビン(Hb)値 10g/dl未満の症例では他家血輸血も考慮すべきだが、10〜11g/dl未満なら自己血貯血2単位+回収式自己血輸血、または自己血貯血4単位で、11g/dl以上なら回収式自己血輸血または自己血貯血2単位にて対応可能であることが示された。TKAに際して回収式自己血輸血を実施した関節リウマチ(RA)56症例の検討結果を、鹿児島赤十字病院リウマチ膠原病センターの永田政仁氏が6日午前の一般口演で報告した。

 他家血輸血のリスクを考慮すれば、RAの貧血例に対する手術においても、できるだけ自己血輸血による対応が求められる。自己血輸血で一般的なのは術前貯血式自己血輸血だが、貧血例では貯血量に限界があるため、術中回収式自己血輸血の意義は高いと考えられる。永田氏らは今般、RA56症例に対して、術前貯血全血2単位+回収式自己血輸血を用いてTKAを実施した。

 貯血前の平均Hb値は11.4と低値で、20例35%が11未満だった。術中術後出血量の平均は1104mlに達する。出血量に対して輸液を等量負荷したと仮定して算出した周術期の予測Hb値は7.9で、Hb値が7未満となる症例が12例、21.4%発生すると予想された。しかし実際には、術後1週時のHb値は8.7、Hb値7未満の症例は2例3.5%だけで、他家血輸血を要した症例はなく、自己血貯血+回収式自己血輸血が有効だったと見られる。

 Callaghan らの報告によれば、片側TKAの洗浄式回収装置における回収量は200〜300ml、平均ヘマトクリット(Ht)値は約50%、非洗浄式回収装置による回収量は200〜400ml、Ht値は25〜35%で、赤血球M.A.P(RC-M.A.P.)血に換算するとほぼ2単位に相当するという。装置や術前Ht値、回収率にも左右されるが、回収式自己血輸血の併用で術前貯血量の低減が実現することになる。

 本研究において、貯血前Hb値別に周術期Hb値の推移をみると、貯血前11以上の症例では、平均11.5から術後1週時には9.0となり、10〜11未満の症例では10.2から8.4になった。7.0未満の症例はなく、他家血輸血は回避できるものと考えられた。

 しかし、貯血前Hb値が10未満の症例では、術前9.5が術後1週時には7.7となっており、貯血によるHb回復率低下や術後回収量の低下を考えると、他家血輸血が必要になる可能性が高いという。

 永田氏は、「循環器、呼吸器などの全身状態や循環血液量、抗凝固療法の有無により対応は変わってくるが、Hb 値10未満の症例においては、貧血評価や内科的治療を優先すべきだ。特に高齢者においては、安全性が向上した現在においては他家血輸血も考慮する必要がある」との見解を示した。

 なお、同院では1994年に洗浄式自己血回収装置HaemoLite 2を導入し、2003年には装置をOrthoPATに変更している。いずれも整形外科手術対応だが、OrthoPATは整形外科症例での処理に特化して開発されたより小型・軽量の装置である。高Ht値(70〜80%)の濃厚洗浄赤血球液を得られるため低Ht値の血液や少量出血にも対応可能で、返血時の容量負荷も小さくて済む。(中西美荷、医学ライター)

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