2005.01.29

【コラム:編集委員の視点】 何もしなかったイレッサ検討会

 2005年1月20日に開かれた「イレッサ検討会」は結局、「現時点では何もアクションを起こさない」ことを決めたにすぎなかった。製造・販売元のアストラゼネカ社が現在行っている詳細な解析の結果を待って、改めて開かれる予定という。

 イレッサは、2002年7月の販売開始直後から、間質性肺炎という重い副作用による死亡が相次いで報告され、大きな社会問題となった。2004年12月28日現在、死亡例は588人に上っている。

 そもそもこの検討会は、昨年12月に発表された、イレッサに延命効果が認められなかったというISEL(IRESSA Survival Evaluation in Lung cancer)試験の結果を受けて、日本においてこのデータをどう見るか、またそれに伴って具体的な対策を取るべきかどうかを話し合うために設けられた。

 ところが、肝心のデータがきちんと開示されたとはとても言えなかった。確かにアストラゼネカ社側は、英国本社から担当者が来日して、ISEL試験の結果を、スライドを使って説明した。ところが、あまりにもぎっしり詰め込んだスライドだったため、細かなところまで判読するのはかなり難しかった(離れた傍聴席からは特に)。さすがに検討会の委員には、スライドのコピーが配付されたのだが、それも会議終了後に回収するという徹底ぶりだった。

 委員からは、検討会に備えるために事前に資料を入手したいという要望が出されており、厚生労働省もそれに応えた。事前に送付された資料の中には、件のスライドのコピーも含まれてはいた。しかし、当日発表されたのは、バージョンアップされたより詳しいスライド。つまり、委員であっても、当日初めて見たデータもあったわけだ。

 会議の冒頭で厚生労働省は、アストラゼネカ社に対してデータを出すよう要請したが、断られたと弁明した。学術論文として発表することを検討しているからという理由だが、薬の承認をつかさどる役所にしては、あまりにも弱腰ではないか。

 詳細なデータを明らかにした上で議論すべき場面でそれが行われなかった以上、厚生労働省、アストラゼネカ社、それに検討会の委員たちは、結果的に、イレッサという薬自体を“延命”させたことになる。(う)


*編集委員の視点は、弊社の医療担当編集委員が交代で執筆する新設コラムです。どうぞご期待ください。ご意見・ご感想をお待ちしています。medwave@nikkeibp.co.jpにお寄せください。

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