2004.11.10

心不全ではRAA系抑制による血中CRP濃度の低下はわずかに止まる

 心不全患者では経過とともに着実に血中CRP濃度が上昇するが、それをAT1受容体ブロッカーバルサルタンはプラセボに比べて有意に抑制する。しかし、その抑制の程度はわずかであり、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系抑制によってもCRP濃度はそれほど大きく低下しない−−バルサルタンの大規模臨床試験Val-HeFTのデータベースを用いた解析から、このような結果が示された。報告したのは、イタリア・Mario Negri薬学研究所のRoberto Latini氏が11月8日に発表した。

 血中CRP濃度は炎症反応の指標であり、冠動脈疾患患者における心血管イベントの負の予測因子として知られているが、心不全における意義はそれほど明確ではない。一方、RAA系の活性化と炎症反応とは相互作用し、これが動脈硬化形成過程における中心的役割を果たしていると考えられるが、心不全でRAA系とCRP濃度の関係を検討した成績は少ない。そこで今回、Latini氏らは、Val-HeFTのデータベースを用いて、この点について検討を加えた。

 Val-HeFTは、標準的治療を受けているNYHA II〜IVの慢性心不全患者5010例を対象に、バルサルタン併用による死亡および心血管イベントの抑制効果について検討したもの。バルサルタンはプラセボと比較して、死亡および心血管イベントを有意に抑制することが判明している。今回、Latini氏らが対象としたのはCRP濃度を連続して測定可能であった4202例で、CRP濃度に影響を与える炎症性疾患や感染症患者、および白血球数>1万1000/mm3以上の症例は解析から除外した。バルサルタンによるCRP濃度への影響は、試験開始時から4、12、24カ月後、および試験終了時におけるベースライン時からの変化量で評価し、ベースライン時CRP、HYHAクラスなどで補正したnon-parametoricな多変量解析を加えた。さらに、高脂血症治療薬スタチンの使用の有無によっても解析を行った。

 その結果、ベースライン時の血中CRP濃度(中央値)はバルサルタン群3.08mg/L、プラセボ群2.93mg/Lで、両群間で有意差はなかった。その後、経過とともにプラセボ群では着実にCRP濃度は上昇したが、これと比較してバルサルタン群ではわずか(最大の変化量を示した4カ月後でも、平均変化量は0.10mg/L強)ではあるが有意にCRP濃度は低下していた。今回の解析対象のうち、Val-HeFTにおける試験開始時におけるスタチン使用例は1328例、非使用例は2739例であった。スタチン使用、非使用例におけるバルサルタンおよびプラセボ群の割合はほぼ同等であった。バルサルタン群のプラセボ群に比較したCRP濃度の抑制効果は、スタチン使用例より非使用例でより著明に認められた。

 以上からLatini氏は、「心不全患者でも経過とともにCRP濃度は上昇し、バルサルタンはそれをわずかだが抑制する。この効果はスタチン使用と独立したものであるが、スタチン使用例ではすでにCRP濃度低値の例が多いためほとんど目立たない」と推考した。そして、心不全患者でRAA系とCRP濃度との関係について検討したこれまでの数少ない試験の1つであるRALESにおいて、抗アルドステオロン薬スピロノラクトンにプラセボと比較したCRP濃度の抑制効果が認められなかったことも考慮に入れて、「心不全患者におけるRAA系抑制によるCRP濃度低下はあっても軽度、もしくは他の要因によるものかもしれない」と結論付けた。

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