2004.11.08

2型糖尿病におけるACE阻害薬の腎保護作用はアンジオテンシン2受容体拮抗薬と同等:DETAIL研究

 2型糖尿病における腎障害進展抑制作用は、アンジオテンシン2型受容体拮抗薬(ARB)のエビデンスが豊富だが、ACE阻害薬もARBと少なくとも同等であるようだ。NEJM誌11月4日号に掲載されたDETAIL試験の結果である。本年の欧州心臓病学会(ESC)で報告された結果の文献化で、University of Birmingham(英国)のAnthony H. Barnett氏らが報告した。

 DETAIL試験は1996年に計画されたということで、2型糖尿病におけるARBの腎保護作用を、その当時、1型、2型を問わず糖尿病性腎症に対する第一選択薬だったACE阻害薬と比較する目的で行われた。

 対象は、器質的腎病変を認めず、アルブミン尿陽性(24時間尿中クレアチニン排泄量:11〜999μg/分)の2型糖尿病例で、3カ月のACE阻害薬服用後に高血圧(平均152/86mmHg、上限180/95mmHg未満)を認めた250例である。
 
 これら250例が、ACE阻害薬・エナラプリル10〜20mg/日群(130例)とARB・テルミサルタン40〜80mg/日群(120例)に無作為化され、二重盲検法で5年間追跡された。一次評価項目は、「糸球体濾過率(GFR)の変化」である。

 しかし、本試験では両群の30%強が、5年間を待たずに脱落しており、さらに5年後のGFRを評価できたのはACE阻害薬群74例、ARB群62例のみだった。脱落のおよそ半数は有害事象によるものだった。

 このため研究者らは、脱落例の最後に測定したGFRを加え、全250例中の116例で解析を行った。
  
 その結果、ACE阻害薬群におけるGFR変化は−14.9mL/分/1.73m2、ARB群では−17.9mL/分/1.73m2で、ACE阻害薬群との差は−3mL/分/1.73m2だった(95%信頼区間:−7.6〜1.6mL/分/1.73m2)。本試験ではいずれかの群のGFRが他群に比べ10mL/分/1.73m2以上低下していた場合を「劣勢」と事前に定義しており(J Diabetes Complications. 2002; 16:195 :PubMed:)、ARB群の95%信頼区間下限が7.6mL/分/1.73m2だったため、ACE阻害薬に対し「非劣勢」であるとされた。

 また、二次評価項目である「血清クレアチニン値」は両群とも0.10mg/dLで差はなく、また尿中アルブミン排泄量は、ACE阻害薬群では試験開始時の0.99倍と減少、ARB群では逆に増加し1.03倍だったが、両群間に有意差は認められなかった。
 
 両群の血圧だが、収縮期血圧160mmHg未満、140mmHg未満を達成できた割合に有意差はなく(それぞれ全体で75%、42%)、また両群の収縮期血圧降圧度にも有意差がないとされるため(ARB群:6.9mmHg、ACE阻害薬群:2.9mmHg(両群間の差の95%信頼区間:−8.5〜0.5mmHg)、研究者らは「2型糖尿病の早期腎障害に対するARBとACE阻害薬の腎保護作用は同等」と結論付けている。

 ただし、本試験では降圧不十分な場合、レニン・アンジオテンシン系抑制薬以外の降圧薬を追加できたにも関わらず、両群とも試験終了時の収縮期血圧は145mmHg前後だった。これには、降圧目標が当初「160/90mmHg未満」とされていたのが関係しているかもしれない。

 一方、心血管系イベントに対する影響は、試験開始時、50%弱に心血管系イベント既往歴が認められたにもかかわらず、ARB群で心血管系死亡を3例、ACE阻害薬群で2例を認めただけだった(心血管系イベント数は「ほとんどない」との記述のみで、実数不明)。

 本試験には脱落の多さ、血圧コントロールの不十分さなどの限界もあるが、ACE阻害薬は2型糖尿病性腎症において、腎保護作用はARBと同等とのエビデンスを獲得するかたちとなった。一方ARBは、心筋梗塞亜急性期の心保護作用に続き、再び、ACE阻害薬を上回る臓器保護作用を示し得なかったことになる。

 なお、本試験で検討されたテルミサルタンは、現在ACE阻害薬単独、あるいはACE阻害薬併用と、心血管系ハイリスク例におけるイベント抑制作用を比較する大規模試験ONTARGET(Am Heart J. 2004; 148: 52 :PubMed:) が進行しており、どのような結果となるか興味深い。

 本論文のタイトルは「Angiotensin-Receptor Blockade versus Converting-Enzyme Inhibition in Type 2 Diabetes and Nephropathy」。こちら から全文がダウンロード可能だ(要無料登録)。(宇津貴史、医学レポーター)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 前代未聞の状況だった今夏を象徴する2症例 木川英の「救急クリニック24時」 FBシェア数:76
  2. 64歳女性。発熱と皮疹 日経メディクイズ●救急 FBシェア数:0
  3. 薬物乱用頭痛は病態を頭に入れて対処しよう 柴田靖の「頭痛外来 研修道場」 FBシェア数:36
  4. 心房細動と心房粗動の脳梗塞リスクは異なる JAMA Network Open誌から FBシェア数:46
  5. 入院患者の不穏行動をAIで予知して防ぐ リポート◎手首装着型センサーを使ったシステムの開発が進展中 FBシェア数:90
  6. 町ぐるみで研修医に「本物の地域医療」を伝授 記者リポート FBシェア数:34
  7. 治療に直結する脳梗塞の病型診断 今さら聞けない画像診断のキホン FBシェア数:0
  8. 風疹の国内流行が発生し始めている可能性が高い 感染研が緊急情報、首都圏で風疹患者が急増 FBシェア数:82
  9. 【漫画】患者さんの発言にビックリ ガンバレ薬剤師 FBシェア数:40
  10. 塗り分け注意!メサデルムとリンデロンVG セキララ告白!個別指導 FBシェア数:28
医師と医学研究者におすすめの英文校正