2004.10.27

高身長女児へのエストロゲン投与で将来不妊を引き起こす可能性

 欧米豪では1950年代から、将来身長が177cm以上になると予想された女児にエストロゲンの投与が行われてきた。効果については、無作為割付比較対照試験が行われていないため、明確ではない。が、深刻な副作用はないと言われてきたこの治療の、生殖能力への影響が、数年前から認識され始めた。今回オーストラリアの研究者らは、生殖能力に対する長期的な影響の大規模な評価を試みた。後ろ向きコホート研究の結果は、Lancet誌10月23日号に報告された。

 対象者は、同国の小児内分泌医の記録などを基に選出された。対照群は、高身長が予想されたがエストロゲン治療を選択しなかった女性とした。調査時の年齢は20〜50歳代で、治療群の平均年齢は39.8歳だった。社会経済的な状態などが類似している女性を選び、治療群371人、対照群409人を分析対象にした。

 治療群では、妊娠を希望しても12カ月以上に渡って妊娠しない女性が多く(相対リスク1.80)、排卵誘発剤を使用した経験も多かった(相対リスク2.05)。また、最初の妊娠について調べたところ、避妊しない場合の月経周期1回当たりの妊娠率は治療群の方が40%低かった(年齢調整受胎率は0.59)。

 以上の結果は、思春期の高用量エストロゲン治療が女性の生殖能力を低下させることを示唆した。

 日本には、高身長に悩む女性が少ないこともあり、この治療の適応はマルファン症候群患者に限られているようだ。また、海外でも近年、高身長の女性が社会に受け入れられ易くなったため、適応頻度は減っている。

 論文の原題は「Oestrogen treatment to reduce the adult height of tall
girls: long-term effects on fertility」、要約はこちらで閲覧できる(Lancet誌への登録が必要です)。 
(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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