2004.09.09

【解説】広告制限の抜け道、医療機関の名称に法の網?

 「○○不眠ストレスクリニック」――。あるJRの駅で、こうした名前が書かれた診療所の看板を見た。周知のように、医療機関は、診療科目をはじめ広告できる事項が厳しく制限されている。そこで、専門性を打ち出したい医療機関の中には、名前にそれを盛り込むよう工夫するところは以前からあった。

 「ここまできたのか…」と筆者は思った。医療機関のPRに詳しい広告代理店の関係者によれば、現在は診療所や病院の名称はどんなものをつけても問題ないと考えているという。厚生労働大臣の許可を得た上でのことかもしれないが、「××乳腺クリニック」「△△脊椎クリニック」など、診療科目のような言葉を盛り込んだ名前の医療機関も出てきている。

 ところが、6月中旬、気になる出来事があった。医療機関の名前に、広告が認められている標榜科目以外の診療科名あるいはそれと紛らわしい文言を盛り込むことは、医療法に規定された広告制限の趣旨から認められないとの判決が、横浜地方裁判所で出たのだ。

 医療機関名を「乳腺と胃腸の病院」に変更しようとした医療法人に対し、政令で認められていない「乳腺」の使用を認めなかった行政側を支持する内容だった。判決は現行の広告制限の公益性を認め、診療科名を人の身体の部位や治療方法などによって特定される名称と位置づけた。判決を不服として原告の医療法人は東京高等裁判所に控訴、裁判は今後も続くことになりそうだ。

 このケースは医療法人だったため、病院の名称変更は定款の変更になり、法令に違反していないかどうかを審査する法的権限が行政にあった。一方、個人の医師の新規開業の場合でも、診療所の名称については開設の届け出段階で保健所などの指導があるという。

 もちろん、厳しく制限されている診療科目の抜け道として、名称をうまく活用しようというのはあまり関心できることではない。だが、先に掲げたような名称のクリニックが出現している背景には、専門性を打ち出したい医療機関に行政側が弾力的運用で応えている面があるのも確かだ。

 裁判で原告側も主張したことだが、広告規制を維持しようとするのなら、社会や医療界の流れに遅れることがないよう、標榜科目の臨機応変な見直しなどの措置を取る必要があるのは言うまでもない。(井上俊明、医療局編集委員)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 手代木社長に聞く、ゾフルーザの出荷調整の理由 厚労省発表では、ゾフルーザの供給量は約40.8万人分 FBシェア数:91
  2. 釣り針が刺さったら糸1本でポーン!と抜こう EM Allianceの「知っ得、納得! ER Tips」 FBシェア数:72
  3. インフルエンザ診療に迅速検査キットは必要? 岡秀昭の「一般外来で感染症をどう診る?」 FBシェア数:226
  4. 「お楽しみ程度の経口摂取を」で本当にいいの? 吉松由貴の「誤嚥性肺炎、診療の知恵袋」 FBシェア数:220
  5. 意思を確認できない患者の情報はどこまで開示可能? 特集◎これってコンプライアンス違反?《8》家族への情報開示 FBシェア数:10
  6. 腹部エコーが「難しい」と感じるのはなぜか? 今さら聞けない画像診断のキホン FBシェア数:24
  7. ガイドラインが変わり過ぎる米、変わらない日本 記者の眼 FBシェア数:120
  8. アドレナリンが効かなかったワケ アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり FBシェア数:147
  9. 周術期のヘパリンブリッジはもういらない? プライマリ・ケア医のための心房細動入門リターンズ FBシェア数:270
  10. やる? やらない? 事務部門の外部委託 診療所経営駆け込み寺 FBシェア数:18
医師と医学研究者におすすめの英文校正