2004.07.22

“磁気誘導薬”実現へ、富士通研と東北大が均一長のカーボンナノチューブを開発

 効き目も強いが副作用も強い薬剤を少量投与して磁力で患部に誘導する−−。こんな夢の薬の実現に道を開くナノテク新技術の開発に国内の研究グループが初めて成功した。富士通研究所と東北大学多元物質科学研究所が7月16日に発表した。研究グループが開発したのは、均一な長さの短繊維カーボンナノチューブの製造法と、このチューブに磁性金属を充填する技術の二つだ。

 均一な長さのカーボンナノチューブの製造には、ナノレベルの特殊な“金型”を用いる。まずシリコン基板の上に薄いアルミニウム層を作り、この層に硫酸中で「陽極酸化」と呼ばれる処理を施すと、無数の縦穴が形成される。この段階で600〜800度の炭化水素ガスを流すと、穴の内壁に炭素の層ができる。表面の炭素を除去した後、強酸で基板を溶かせば、直径6〜8nm(ナノメートル)で長さの揃ったカーボンナノチューブが出来上がる。アルミニウム層の厚さを変えれば、ナノチューブの長さを自由に変えることができる。

 研究グループでは、上記の過程の表面の炭素を除去した段階で、基板を陰極として電気メッキすることで、ナノチューブの中に隙間なく金属を充填することに成功した。実験では、300nmのナノチューブにニッケルと鉄の合金を充填した。通常、ナノサイズの磁性金属は空気中ではすぐに燃えてしまうなど不安定だが、カーボンで覆われているため、安定度が高い。液体中に分散させ、磁石を近づけたところ、引き寄せられ、磁性を持っていることが確認できたという。

 カーボンナノチューブの外壁には、酵素やたんぱく質などの生体高分子を付着させることができるので、DNAをつけておき、特定のたんぱく質だけ磁気で分離・除去したり、抗体を付着させることで、病原体や腫瘍を極めて高い精密度で検出したり、患部を特定することができる。薬剤を特定の臓器に精密誘導することも夢ではなさそうだ。少量でも高い磁性を持たせることができるので、PETやMRIなどの大型装置の代わりに小型・低価格の診断装置でこうした診断や治療ができるようになる可能性もある。医療応用への期待度が高い新技術と言えるだろう。

 富士通のプレスリリースはこちらまで。(中沢真也)

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