2004.06.29

大血管のアテローム硬化性病変と脳梗塞の予防、外科的治療の適応と再発予防における抗血小板療法などの有用性を総括

 脳梗塞の原因には、脳内穿通枝領域の細小血管におこる血栓性閉塞のほか、心臓または大血管に生じた血栓による塞栓などがあるが、欧米では大血管のアテローム性血栓に起因する脳梗塞が脳卒中全体の約20%を占めると言われる。このため、大血管の動脈硬化性病変が認められる患者に対しては、脳梗塞の発症リスクに応じた治療が必要になるが、6月24日に行われたサテライトシンポジウム「New Insights into Stroke Management」でBishat-Claude-Bernard UniversityのPierre Amarenco氏は、外科的治療の適応を示すとともに、再発予防における降圧薬、スタチン、抗血小板療法などの有用性について次のように総括した。

 頭蓋外血管の塞栓源として最も高頻度にみられるのは内頸動脈の狭窄病変だが、既報の大規模臨床試験から、脳卒中症状があり内頸動脈に50%以上の狭窄が認められる場合には、外科的治療の有用性が内科的治療に優ることが明らかになっている。ただし、無症候性の内頸動脈狭窄に対する外科的治療の優位性はまだ確立していない。症例によっては血管形成術やステント留置がおこなわれることもあるが、まだ試行段階の治療法である。

 頸動脈以外で比較的高頻度にみられる塞栓源としては、椎骨動脈、脳底動脈があり、最近の研究によるとこれらの病変が非心原性脳梗塞の約25%に認められている。これに加えて大動脈の病変も見逃すことができない。従来、塞栓源不明と診断されてきた脳梗塞の一部はこれが原因となっている可能性がある。脳塞栓の原因の数%と報告されており、必ずしも高頻度ではないが、大動脈に4mm以上の動脈硬化プラークが認められる症例では脳卒中の年間発症率が12%に達しており、無視できない病変といえるだろう。

 大血管に動脈硬化性病変が認められる症例では、冠動脈疾患や末梢血管障害とともに脳梗塞の発症リスクが高く、動脈硬化の進行を抑制し、血管病変を改善するために予防的治療が必要である。動脈硬化の全身的な危険因子としては高血圧、高脂血症、糖尿病などが知られるが、このなかで脳卒中の一次・二次予防効果が証明されているのは高血圧である。また、高脂血症治療薬も冠動脈疾患の二次予防試験で脳卒中抑制効果を示したものがある。糖尿病の治療では、厳格な血糖管理による脳卒中リスクの有意な減少は認められていないが、糖尿病患者の血圧の厳格な血圧管理により脳卒中発症率が低下すると報告されている。

 脳梗塞の再発予防試験で特にすぐれた有効性が認められているのは抗血小板療法である。臨床成績により脳卒中を含む心血管イベント抑制効果が確立しているのは、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンなどであるが、最近、日本でおこなわれた大規模臨床試験CSPS(Cilostazol Stroke Prevention Study)により再発抑制効果が証明されたシロスタゾールも、このリストに加えてよいであろう。

 シロスタゾールについては、もう一つ興味深い成績が昨年、発表された。冠動脈疾患患者705例を対象に冠動脈インターベンション施行後の再狭窄抑制効果を検討した臨床試験CREST(Cilostazol for Restenosis Trial)である。治療ではアスピリンとクロピドグレルを基礎薬として用い、無作為割付された1群にはシロスタゾール200mg/日を、他の1群にはプラセボを追加投与、6カ月間追跡した。その結果、病変部およびステントの再狭窄率はシロスタゾールによりそれぞれ39.5%、36.0%と有意に低下した。この成績から、シロスタゾールはアスピリン、クロピドグレルとは機序の異なる動脈硬化抑制作用を有する可能性が考えられる。動脈硬化の予防・治療における新しい可能性を示した成績と言えるだろう。(小林圭)

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