2004.04.09
ファンケル、吸収率の高いミネラルサプリ4品を発売へ 独自開発のオリゴ糖「ツイントース」を配合 ミネラルの吸収率をアップ
ファンケルは、カルシウムなどのミネラル類の吸収率が高いミネラルサプリメント4品を相次ぎ、発売する。
ヒトを対象にした試験で吸収率が高まることを実証したツイントース(商標)という独自開発のオリゴ糖を配合した。 ツイントースをミネラルサプリに配合すると、カルシウムの腸内の吸収率が約1.5倍アップ、カルシウムの体内保留率が約6倍にアップ、骨の形成も促進することを、厳密なヒト試験で確認している。
4月21日に「カルシウムマグ ツイントース配合」と「鉄 ツイントース配合」、次いで5月21日に「マルチミネラル ツイントース配合」と「亜鉛 ツイントース配合」を発売する。
ツイントースは、洋野菜チコリの根から抽出される多糖類イヌリンに、酵素を作用させて作られるオリゴ糖。フラクトース(果糖)が二つ、環状に結合した化学構造をしていて、学術名は「DFAIII」と略記される。
2001年11月から国の助成金を受け、北海道大学と日本甜菜製糖、ファンケルが共同で研究を進めてきた。
ファンケルはこのツイントースを、カルシウムのサプリメントに配合し、実際にヒト試験で吸収率が高まることを確認している。
ヒト試験は、12人に病院に4日間入院してもらい食事を管理すると共に、すべての便と尿をとって分析するという厳密な出納試験。
ファンケルは、このヒト試験の成果を積み重ねることで、厚生労働省の特定保健用食品(トクホ)の表示許可を取得したい考えだ。
ミネラルの吸収を促進することをヒトで実証したトクホでは、明治製菓が先行してきた。
難消化オリゴ糖の一つであるフラクトオリゴ糖と、牛乳たんぱく質を酵素分解して作られるCPP(カゼインホスホペプチド)の2つの素材を、トクホとして実用化している。
ツイントースは、厳密なヒト出納試験によって効果を実証している点で、既存のトクホより“エビデンス度”が一段高いといえる。
カルシウムの吸収促進だけでなく、体内保留率の向上も実証している。
現在はさらに、骨の形成促進効果の確認を進めている。
ツイントースは、小腸の上皮細胞のタイトジャンクションを広げる
ツイントースには、特徴がもう一つある。
ミネラルの体内への吸収を促進するメカニズムが、既存のトクホ素材と異なっている点だ。
フラクトオリゴ糖は、大腸の腸内細菌の働きで有機酸に変わることによって、大腸でのミネラルの吸収を促進する。
一方、CPPは、ミネラルを可溶化して吸収しやすくする性質をもっており、やはり主として大腸でのミネラルの吸収を促進する。
これに対してツイントースは、小腸でのミネラルの吸収を促進することがわかってきた。
小腸粘膜の上皮細胞は、タイトジャンクションという構造によって隣り同士の細胞がくっつきあっている。
ツイントースは、このタイトジャンクションを広げて、ミネラルが細胞間を透過しやすくすることで、小腸でのミネラルの吸収を促進する。
さらに、ツイントースは大腸でのミネラルの吸収も促進しそうだ。
フラクトオリゴ糖と同じように難消化性の糖類なので、大腸にそのまま到達して、腸内細菌の餌になり、有機酸に変わるからだ。
先の小腸での効果に、この大腸での効果が加わるのだが、これまでの研究では小腸での効果の寄与が特に大きいと考えられている。
ツイントースはタイトジャンクションに働きかけるという新たな作用点をもつため、体内への吸収を高める対象物質は、ミネラルだけではなさそうだ。
例えば、ポリフェノールの中には、ツイントースによって体内吸収が高まる物質があることがわかってきた。
ソバに含まれるポリフェノールのルチンに、グルコースを結合させて水に溶けやすくしたα-G-ルチンというポリフェノールは、ツイントースを加えると上皮細胞間を透過しやすくなることが、北大などの研究で認められた。
ツイントースは、ファンケルが独自開発に成功した健康機能素材の第1弾。
4〜5月に発売するミネラルサプリメント4品に続き、ツイントース配合商品を増やしていきそうだ。
なお、ツイントースがヒト試験で骨形成を促進した成果と、α-G-ルチンの細胞間透過性を向上させた成果は、3月末に広島で開かれた日本農芸化学会で発表された。
タイトジャンクションを通じて腸管内の物質が体内に移動する(=吸収する)という現象は、古い栄養学ではほとんど考慮されていなかった。
ところが、小腸上皮などの細胞を培養して物質移動を解析する技術の開発・普及につれて、食品に含まれる成分の中には、タイトジャンクションに働きかけるものが少なからずあることが判明しており、ホットな研究テーマになっている。(河田孝雄)