2004.01.09

院外心停止患者の救命率、心静止例ではバソプレシンがエピネフリンを上回ることが判明

 病院外心停止患者1200人を対象とした欧州3カ国の多施設共同無作為化二重盲検試験で、救命処置開始時の心電図波形が心静止(asystole)状態だった人では、バソプレシン投与による救命率、生存退院率が共にエピネフリン投与群を有意に上回ることがわかった。当初波形が心室細動(VT)や無脈性電気活動(PEA)の場合も救命率は同等で、今回得られたデータは、バソプレシンを心肺蘇生補助の第一選択薬に位置付ける有力なエビデンスとなりそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌1月8日号に掲載された。

 対象は、オーストリア、ドイツ、スイスの3カ国33カ所の救急救命ユニットに、心停止状態で搬送されてきた成人患者1219人。無作為に2群に分け、バソプレシン40単位またはエピネフリン1mgを静脈内注射、心拍が再開しなかった場合は3分後に再投与した。2回の試験薬投与でも心拍の再開がみられなかった場合は、エピネフリンを投与した(投与量の中央値:5mg)。解析は、割り付けデータが紛失した33人を除く1186人について行った。

 患者の平均年齢は66歳、7割が男性で、2割弱は居合わせた人から心肺蘇生術(CPR)を受けている。心停止の原因(疑い)は心筋梗塞が6割弱、不整脈が2割強、肺塞栓が1割強。救命処置開始時の心電図波形は、VFが4割、心静止が4割強、PEAが2割弱だった。こうした患者背景に群間の差はなかった。

 救急救命ユニットでの救命率(生存入院率)は、バソプレシン群(589人)が36.3%、エピネフリン群(597人)が31.2%で、有意差はないもののバソプレシン群で高い傾向があることが判明(p=0.06)。心電図の当初波形別では、心静止例で、バソプレシン群の救命率が有意に高くなった(29.0%対20.3%、p=0.02)。心静止例の生存退院率も、バソプレシン群で有意に高かった(4.7%対1.5%、p=0.04)。

 解析対象を、最初の2回の試験薬投与で心拍再開がみられなかった732人に限定すると、その差はさらに顕著になった。救命率はバソプレシン群(373人)が25.7%、エピネフリン群(359人)が16.4%とバソプレシン群で有意に高く(p=0.002)、生存退院率も同様だった(6.2%対1.7%、p=0.002)。

 論文に対する論説では、一般に心停止患者の2〜4割を占め、最も救命が難しい心静止例に対し「バソプレシン単独、あるいはバソプレシン2回投与後のエピネフリン投与で高い救命効果が得られるとの結果は、心肺蘇生上の重要なブレークスルーになる」と評価。この知見は臨床現場に遅延無く反映されるべきだと強調している。

 この論文のタイトルは、「A Comparison of Vasopressin and Epinephrine for Out-of-Hospital Cardiopulmonary Resuscitation」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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