2004.01.09

「周術期酸素投与による創感染予防」に効果無し、無作為化二重盲検試験で判明

 開腹手術を受ける成人患者165人を対象とした米の無作為化試験で、「周術期に高濃度の酸素を投与する」との戦略に、創感染を予防する効果が認められないことがわかった。意外なことに、高濃度酸素の投与群では、創感染の発生率がむしろ高かったという。研究結果は、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌1月7日号に掲載された。

 創感染は外科治療の主要な合併症の一つで、予防的抗菌薬投与や周術期体温管理など、様々な予防策に対する検証が進められている。高濃度酸素療法に関しては、3年前にオーストリアの研究グループが、開腹による大腸切除術患者500人を対象とした無作為化試験結果を発表(NEJM;342,161,2000)。高濃度酸素(80%酸素)を術中および術後2時間投与した群の創感染リスクがほぼ半減するとのデータで、特別な設備投資を行うことなくルーチンな手技として実施できるため、大きな注目が集まっていた。

 しかし、オーストリアの研究の対象は大腸切除術患者に限られており、一般的な開腹術に応用できるかはわからない。そこで、米国Cornel大学の研究グループは、開腹手術(腹腔鏡併用を含む)を受ける患者165人を対象とした、無作為化二重盲検試験を行い、この戦略が腹部外科手術におけるルーチンな手技として一般化できるかどうかを調べた。

 解析対象は、割り付け後に手術プランの変更などがあった5人を除く160人。平均年齢は高濃度酸素群(80人)が54歳、対照群(35%酸素を投与、80人)が57歳で、男女比は両群とも約4対6。手術部位は7割が大腸、4割が担癌患者で、米国麻酔学会(ASA)の術前評価スコアや易感染性を評価するNNISSリスクスコアなど、主な患者背景に群間の差はなかった。

 ところが、術後14日以内の創感染発生率は高濃度酸素群が25.0%、対照群が11.3%と、高濃度酸素群で有意に高いことが判明(p=0.02)。多変量解析でも、「高濃度酸素の投与」は創感染の発生と有意に相関していた(p=0.03)。術後に創感染を起こした患者では、入院日数が有意に長くなった(平均13.3日対6.0日、p<0.001)。

 研究グループはこの結果を「予想外」(unexpected results)としつつも、一般的な腹部外科手術において、周術期に高濃度酸素をルーチンに投与しても創感染を防ぐ効果はなく、逆効果である恐れもあると考察。一部の患者にメリットがある可能性は残るが、現時点では高濃度酸素のルーチン投与は行うべきではないと結論付けている。

 この論文のタイトルは、「Surgical Site Infection and the Routine Use of Perioperative Hyperoxia in a General Surgical Population」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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