2004.01.07

オフポンプCABGのグラフト開存率、オンポンプCABGより低いことが判明

 人工心肺を用いない、いわゆるオフポンプの冠動脈バイパス術(CABG)では、3カ月後のグラフト開存率が通常のオンポンプCABGより有意に低いことがわかった。多枝病変の冠動脈疾患(CAD)患者103人を対象とした英国の無作為化試験の結果で、New England Journal of Medicine(NEJM)誌1月1日号で発表された。

 オフポンプCABGは1990年代に開発された画期的な施術法で、スタビライザーなど補助装置の進歩もあり、特に日本では広く行われつつある。手術中も心臓を止めないため心筋障害が少なく、腎臓や脳など他臓器への障害も軽減されることが示されている。一方、オフポンプCABGを受けた患者には、狭心症の再発や血行再建術の再施行が必要なケースが多いとの報告もあるが、無作為化試験でグラフト開存率を十分に検討した研究はなかった。

 そこで、英国Royal Brompton and Harefield National Health Service TrustのNatasha E. Khan氏らは、多枝病変があるCAD患者104人を無作為に2群に分け、オフポンプCABGと通常のCABGを比較する前向き試験を実施した。無作為割り付け後に手術不適であることがわかった一人を除いた103人の平均年齢は、オフポンプ群(54人)が62歳、オンポンプ群(49人)が65歳。男性比率はオフポンプ群が93%、オンポンプ群が82%で、オフポンプ群の39%、オンポンプ群の49%に心筋梗塞の既往があった。糖尿病は両群とも約3割が合併していた。

 こうした患者背景に群間の有意差はなく、術死も生じなかった。術後の入院日数にも両群に有意差はなかった。平均グラフト数は、オフポンプ群が3.1、オンポンプ群が3.4とほぼ同じ。グラフト実施冠動脈やグラフトに用いた血管にも両群に違いは無かった。施術を行った外科医は二人で、両者とも2年前からオフポンプCABGを実施しており、臨床試験ではオフポンプとオンポンプの手術を同数ずつ行った。

 その結果、トロポニンT値で評価した心筋障害度は、オフポンプ群がオンポンプ群より有意に低く、オフポンプCABGは心筋へのダメージが軽いことが判明。ところが、3カ月後のグラフト開存率(評価症例数:オフポンプ群43人、オンポンプ群39人)は、オフポンプ群で88%、オンポンプ群で98%と、オフポンプ群で有意に低かった(p=0.002)。

 グラフトを受けた冠動脈別では、両群の差は右冠動脈(RCA)で最も大きかったが(84%対100%)、オフポンプCABGが比較的容易な左前下降枝(LAD)でも開存率に差が認められた(92%対100%)。研究グループは、オフポンプCABGでは心筋障害が少ないとのメリットはあるが、術者の技量差や施設間差を除外できる今回の試験設計でもグラフト開存率がオンポンプCABGより低いことを鑑みると、長期的な予後を比較する臨床試験が必要だと結論付けている。

 この論文のタイトルは、「A Randomized Comparison of Off-Pump and On-Pump Multivessel Coronary-Artery Bypass Surgery」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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