2003.12.18

経口レニン阻害薬アリスキレンの第2相試験結果が発表、A2受容体拮抗薬並みの降圧効果が確認

 レニン阻害薬として初の経口薬、アリスキレン(開発コード:SPP100)の前期第2相試験結果が、Hypertension誌12月号に掲載された。軽症〜中等症の高血圧患者226人を対象に、4段階の用量を投与した4週間の試験で、用量依存性の降圧効果が確認された。今後は「既存の降圧薬に優る臨床効果」の証明が必須となるが、経口レニン阻害薬の開発競争に拍車がかかることは間違いなさそうだ。

 アリスキレンは、創薬ベンチャーのスイスSpeedel社が開発した、非ペプチド性の経口レニン阻害薬。経口レニン阻害薬の中では最も臨床開発が進んでおり、2002年にスイスNovartis Pharma社に導出された。より大規模の後期第2相試験を経て、Novartis Pharma社は今年11月、2004年に第3相試験を開始すると発表している。

 今回論文が発表されたのは、Speedel社が実施した前期第2相試験に関するもの。試験では、高血圧患者226人を無作為に、実薬4群、対照薬1群の計5群に割り付けた。実薬群は、アリスキレン37.5mg、75mg、150mg、300mgを1日1回、4週間連日服用。対照薬にはアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬のロサルタンカリウム(わが国での商品名:ニューロタン、1日量100mg)を用いた。評価は24時間自由行動下血圧(ABP)測定により行った。

 その結果、収縮期血圧、拡張期血圧のいずれも、24時間にわたり用量依存性に低下することが確認。血中のレニン活性も用量依存性に低下した。心拍数には用量依存性の変化は認められなかった。日中収縮期血圧の降圧幅は、用量の低い順に−0.4mmHg、−5.3mmHg、−8.0mmHg、−11.0mmHgで、後3用量では、ロサルタンカリウム100mgによる降圧幅(−10.9mmHg)と有意差がなかった。

 主な副作用は疲労感、消化器系障害、頭痛で、発生頻度には実薬群と対照薬群との差がなく、用量依存性も認められなかった。副作用の大半は軽度なものだった。なお、薬剤との関連が疑われる重篤な副作用が、実薬群の二人(虚血性発作と低血圧による失神)、対照薬群の一人(左腸骨動脈瘤破裂)に生じている。

 以上から研究グループは、高血圧患者を対象に、A2受容体拮抗薬と同程度の降圧効果が、レニン阻害薬の経口薬で初めて確認されたと結論。レニン−アンジオテンシン系(RA系)のより下流をブロックするA2受容体拮抗薬、あるいはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬で認められている各種の臓器保護効果が、経口レニン阻害薬でも認められるかについて研究を進めるべきと論じている。

 レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシン1に変換する、RA系の最上流にある酵素。1950年代にスタートしたRA系抑制薬研究で、最初にターゲットとなった酵素だ。しかし、抗レニン抗体やレニン阻害ペプチドの開発には成功したものの、経口服用が可能な薬剤の開発には至らず、先にACE阻害薬やA2受容体拮抗薬が世に出たという経緯がある。

 経口レニン阻害薬はこのアリスキレンのほか、より生物学的利用率が高い製剤をSpeedel社(スイスRoche社に導出)、スイスActelion社(米国Merck社と共同開発で合意)が開発しており、今後数年で臨床開発が急速に進む見込み。しかし、既にRA系抑制薬が広く普及している現在、第3のRA系抑制薬として臨床現場に導入されるためには、既存薬にない効果(追加効果含む)や安全性など、何らかの優位性を示す必要がある。まずはアリスキレンで、どのような設計の第3相試験が行われるのかに注目したい。

 この論文のタイトルは、「Blood Pressure Lowering in Essential Hypertension With an Oral Renin Inhibitor, Aliskiren」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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