2003.12.08

薬剤費の「段階式自己負担」導入に功罪、後発品への切り替え進むが治療中断も−−米研究

 同一クラスの処方薬間で自己負担額に差を付ける「段階式自己負担制度」の導入が進む米国で、導入方法の違いにより、患者の受ける医療内容に差が現れることがわかった。元々2段階の自己負担を設けていた民間保険が3段階へと細分化した場合は、後発品への切り替えが進んだだけだったが、いきなり3段階の薬剤費負担を導入した民間保険では、後発品への切り替えと同時に治療中断例も増えたという。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌12月4日号に掲載された。

 米国では企業勤労者の多くが、福利厚生の一環として企業が提供する団体契約方式の民間健康保険に加入している。保険の適用範囲や自己負担額などの契約内容は保険プランにより異なり、同一企業内でも勤労者の社内的な地位などで変わるのが普通だ。

 ここ数年、薬剤費抑制の切り札として導入が進んでいるのが、処方薬の窓口負担額に段階的な差額を設ける段階式自己負担制度(tiered prescription drug plan)。同一クラスの薬剤を、多くは3段階に分け、1.後発品(ジェネリック)、2.推奨先発品、3.非推奨先発品−−の順で段階的に窓口負担率を高くするという方法だ。2002年春のデータでは、米国の保険加入勤労者の57%が、こうした段階式自己負担制度を持つ保険プランに加入しているという。

 米国Harvard医科大学健康政策部門のHaiden A. Huskamp氏らは、3段階の段階式自己負担制度を導入した2企業で、導入方法の違いにより処方内容などにどのような差が現れるかを検討した。

 調査対象は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、スタチン系薬、プロトンポンプ阻害薬の3種類。例えばスタチン系薬の場合、最も自己負担額が安い第一段階の薬剤はロバスタチンの後発品、第二段階(推奨先発品)は「Baycol」(セリバスタチン)、「Lipitor」(アトルバスタチン)、「Pravachol」(プラバスタチン)、「Zocor」(シンバスタチン)の4品目、第三段階(非推奨先発品)は「Lescol」(フルバスタチン)と「Mevacor」(ロバスタチン)の2品目が設定されている。

 企業の一つは、元々は自己負担額に差を設けていなかったA社。3段階自己負担制度の導入に伴い、窓口負担額は全ての段階の薬剤で以前よりも増額になった。もう一つの企業は、元々2段階の自己負担制度を導入していたB社。先発品を「推奨品」と「非推奨品」に分け、3段階目の非推奨品を処方された場合にのみ自己負担額を増やした。

 その結果、例えばスタチン系薬の場合、A社では最も自己負担額が高くなる「非推奨先発品」服用者の49%が、3段階自己負担制度の導入後は推奨先発品または後発品へと変更。A社と加入者構成がほぼ同じで、同時期に段階式自己負担制度を導入しなかった“対照企業”では、切り替え率は17%と有意に低かった。ACE阻害薬(42%対4%)やプロトンポンプ阻害薬(35%対1%)でも同様に、切り替え率はA社で有意に高かった。

 一方のB社でも、スタチン系薬の「非推奨先発品」服用者の48%が推奨先発品または後発品へと変更。B社と加入者構成がほぼ同じで、同時期に2段階→3段階への組み換えを行わなかった“対照企業”では、切り替え率は8%と有意に低かった。ACE阻害薬(41%対15%)やプロトンポンプ阻害薬(18%対2%)でも同様に、切り替え率は対照企業より高く、薬剤費の抑制という観点では3段階自己負担制度の効果が高いことがわかった。

 大きな違いが現れたのは、非推奨先発品を服用していた人の服用中断率。例えばスタチン系薬の場合、A社では、非推奨先発品を服用していた人の21%が、3段階自己負担制度の導入後にスタチン系薬そのものの服用を止めてしまった(同時期の対照企業:11%、p=0.04)。B社ではこれが9%と、同時期の対照企業(4%)と有意な差はなかった。ACE阻害薬、プロトンポンプ阻害薬でも同様に、A社では明らかに服用中断率が高かった。

 今回得られたデータが示すのは、段階式自己負担制度を全く導入していなかった企業が、最初から3段階の自己負担制度を導入すると、治療の中断が起こる恐れがあるということ。2段階→3段階への組み換えでも同程度の後発品・推奨先発品利用促進が見込めることを鑑みると、段階式自己負担制度を導入する場合は、まさに“段階的な”導入が望ましいようだ。

 この論文のタイトルは、「The Effect of Incentive-Based Formularies on Prescription-Drug Utilization and Spending」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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