2003.12.05

2型糖尿病患者の心血管疾患一次予防にアスピリンは無効? PPP試験が示唆

 心血管疾患のハイリスク者を対象とした「PPP」(Primary Prevention Project)試験のサブ解析で、2型糖尿病患者では、アスピリンを服用しても、心血管イベントの有意な抑制は認められないことが明らかになった。心血管疾患による死亡は、むしろ増加する傾向があったという。研究結果は、Diabetes Care誌12月号に掲載された。

 PPP試験は、イタリアで行われた2×2形式のプラセボ対照多施設共同試験。心血管疾患の既往がなく、高血圧や糖尿病、高脂血症など心血管疾患の危険因子を一つ以上持つ50歳以上の4495人を対象に、アスピリンとビタミンEの心血管疾患一次予防効果を評価した。この試験では、平均3.6年間の追跡でアスピリンが心血管イベントを27%有意に抑制し、特に心血管死亡に対する抑制効果が高い(相対リスク低下率:44%)ことが判明。一方、ビタミンEにはそうした予防効果が認められないことが示されている(Lancet;357,89,2001)。

 研究グループは、PPP試験の開始後、糖尿病の罹患者について、より詳しい解析を行うことを決定。本試験への登録者とは別立てで、糖尿病専門クリニックからの患者登録を行っていた。今回の解析は、本試験への登録者のうち糖尿病に罹患していた744人と、専門クリニックから登録された287人の、計1031人について実施した。

 解析対象となった2型糖尿病患者の平均年齢は64.2歳、男女比はほぼ半々で、半数が65歳以上。高血圧を6割強、高脂血症を3割が合併しており、3割強は肥満だった。本試験の参加者のうち糖尿病に罹患していない3733人との比較では、平均年齢に差はないが男性がやや多く、高血圧、高脂血症合併率が低く、肥満者が多かった。

 2型糖尿病患者の心血管イベントの発生率は、アスピリン服用群が3.9%、対照群が4.3%で、アスピリン服用群で低い傾向はあるものの有意差はないことが判明(相対リスク:0.90、95%信頼区間:0.50〜1.62)。一方、2型糖尿病患者を除いた3733人では、アスピリン服用群の心血管イベントの相対リスクは0.59(95%信頼区間:0.37〜0.94)と、有意に発生が抑制されていた。

 イベントの中で両群に大きな差があったのは、心血管死亡に対するアスピリン服用の影響。2型糖尿病以外の人では、アスピリン服用で心血管死が相対的に68%、有意に抑制された。ところが、2型糖尿病患者の場合、アスピリン服用群で逆に、心血管死が増加する傾向が認められた(相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.49〜3.10)。なお、ビタミンEに関しては、2型糖尿病の罹患の有無によらず、心血管イベント発生率への影響はみられなかった。

 研究グループは、糖尿病は心血管疾患の主要な危険因子であり、糖尿病罹患者には心血管疾患のハイリスク者としてアスピリンを投与すべきと広く信じられているにも関わらず、今回の検討では予防効果が認められないと結論。糖尿病患者への抗凝固療法はアスピリンでは不十分である可能性もあり、より大規模な試験を行って、2型糖尿病患者へのアスピリン投与に本当にメリットがあるのかを調べるべきだと提言している。

 この論文のタイトルは、「Primary Prevention of Cardiovascular Events With Low-Dose Aspirin and Vitamin E in Type 2 Diabetic Patients」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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