2003.12.02

【再掲】 換気ダクト内への殺菌灯設置が「シックビル症候群」に効果−−加研究

 気密性の高いビルの中で過ごす人が、頭痛やのどの痛み、目のかゆみなど、様々な体の不調を訴える−−。これは「シックビル症候群」と呼ばれる現象だが、こうした様々な症状が、換気ダクト内に殺菌灯を設置するという簡単な方法で改善されることがわかった。ビル内で働く人にはわからないように、殺菌灯の点灯と消灯を繰り返したところ、殺菌灯を点灯している期間には症状を訴える人が少ないことが判明したという。研究結果は、Lancet誌11月29日号に掲載された。

 欧米では1970年代の石油ショック以来、気密性を高めて冷暖房費を節約する「省エネビル」が増えた。しかしその後、そうしたビル内で働く人の中に、神経系や呼吸器系、皮膚などに異常を訴える人が増加。「シックビル症候群」という言葉が生まれ、原因の追究が進められた。

 原因の一つとして浮上したのが、建物の換気不足による室内の汚染物質の増加。空気中に浮遊するかびや細菌に加え、ホルムアルデヒドなど建材から発生する化学物質も、原因の一つである可能性があるとされた。しかし、「窓が開かない建物内で長時間過ごす」という心理的な要因や、ビル内の乾燥なども症状に影響している可能性があり、これらの要素がどの程度症状発生に関与しているかはわかっていない。

 カナダMcGill大学Montreal胸部研究所のDick Menzies氏らは、紫外線でかびや細菌を殺す「殺菌灯」を換気ダクト内に設置し、空気中の汚染物質を減らすことで、シックビル症候群を改善できるかもしれないと考えた。だが、「殺菌灯を設置した」という心理的な影響だけで、症状が良くなる可能性もある。そこで、建物の中で働く従業員にはわからないように、殺菌灯のオン・オフを繰り返し、症状がどう変わるかを調べることにした。

 調査対象に選ばれたのは、カナダMontreal内にある3カ所のオフィスビル。3カ所ともビル内は完全禁煙で、気密性が高く、強制換気が行われている。研究グループは換気システムの吹出口側に、ビル内からは見えないように殺菌灯を設置。「4週間点灯、12週間消灯」を3回繰り返した。試験期間中は定期的に空気中の汚染物質の増減を調べ、従業員にも定期的に健康調査票を配布して健康状態を記入してもらった。試験の実施時期はビルごとにずらし、かつ、一つのビルでほぼ1年(48週間)にわたり試験を行うことで、症状などに対する季節変動の影響を最低限に抑えるようにした。

 その結果、殺菌灯を点灯している期間では、吹出口部分で微生物などの量が99%減少。従業員が訴える様々な症状も、殺菌灯の点灯期間中は2割少なくなった。症状の中では、咳やのどの痛みなどの呼吸器症状や、目や鼻の痛みなどの粘膜症状に、特に効果が大きかった。従業員の中では、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患にかかっている人や非喫煙者で、殺菌灯の点灯による症状軽減効果が大きかった。なお、健康調査票では「今、殺菌灯は点いていると思いますか」とも尋ねたが、従業員にはわからなかった。

 研究グループは、殺菌灯のオン・オフがわからない状態で行われた試験でも、殺菌灯を点灯した時に症状が減ったことから、換気ダクト内への殺菌灯設置はシックビル症候群の改善に確かに効果があると結論。1000人が働くオフィスビルの換気ダクトに殺菌灯を設置すると、初期投資に5万2000米ドル(約570万円)、電気代などの維持費に年間1万4000米ドル(約150万円)かかるが、シックビル症候群による労働損失が減るため、長い目で見れば十分元は取れると論じている。

 この論文のタイトルは、「Effect of ultraviolet germicidal lights installed in office ventilation systems on workers' health and wellbeing: double-blind multiple crossover trial」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 訂正 ■
 5段落目にある「排気口」と6段落目の「排気口の出口部分」は、それぞれ「吹出口」、「吹出口部分」の間違いでした。お詫びして訂正致します。

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