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2003.11.13

虚血性脳障害においてもアンジオテンシン2受容体サブタイプは拮抗した作用を示す

 虚血性脳障害において、アンジオテンシン2(AT)受容体サブタイプは、それぞれどのような役割を担っているのか。愛媛大学医学部の岩井將氏らは、AT受容体の主要なサブタイプであるAT1a、AT2受容体欠損マウス(AT1KO、AT2KO)の中大脳動脈閉塞による脳虚血モデルを用いた実験から、二つの受容体サブタイプが脳虚血障害発生においても拮抗する作用を有すること、少なくともその一部が脳血流量と酸化ストレスの制御を介したものであることを11月11日、一般口演で報告した。

 岩井氏らは野生型(WT、C57BL/6)およびAT1aKO、AT2KOマウスを用い、中大脳動脈(MCA)にミクロフィラメント法による塞栓を作製して局所性脳虚血を誘発し、脳血流量の変化をレーザードップラー流量計で測定した。またMCA閉塞24時間後に剖検を行い、虚血領域を脳スライスのTTC(2、3、5-Triphenyltetrazolium Chloride)染色によって、スーパーオキサイドの産生をDHE(dihydroethidium)を用いた蛍光反応によって測定した。

 MCA閉塞による虚血領域は、WTマウスでは冠状切断全領域の20〜30%で、AT2KOマウスでは有意に大きく、AT1aKOマウスでは有意に小さかった。また神経学的障害のスコアは、AT2KOではWTと比較して有意に高かったが、AT1aKOでは低かった。

 WTでは、MCAによる血液供給量が梗塞中心部では梗塞作製前の約15%にまで減少したが、周辺部では60%に維持された。AT1aKO、AT2KOにおける梗塞中心部の血流減少は、WTと相違なかったが、梗塞周辺部においては、AT1KOマウスでは減少が有意に抑制され、AT2KOマウスではより減少していた。梗塞領域におけるスーパーオキサイド産生は、AT1aKOでは抑制されていたが、AT2KOでは非梗塞領域では明らかな変化はなかったものの梗塞領域ではさらに増加していた。

 同氏らは、今回バルサルタンを血圧降下させない用量(3mg/kg/日)で投与し、これらの指標に対する影響も検討。WTマウスではMCA閉塞後の梗塞領域とスーパーオキサイド産生は抑制され、脳血流量は増加し、神経学的スコアの改善が認められた。MCA後の脳障害に対するこうしたバルサルタンの効果は、AT2KOマウスでは脆弱であった。

 これらの結果から岩井氏は、MCA閉塞後の脳虚血障害の発生に際して、AT1a、AT2受容体は拮抗する作用を有しており、その作用の少なくとも一部は、脳血流量と酸化ストレスの制御を介していることが示唆されたと結論した。また本モデルにおけるバルサルタンの脳虚血障害抑制作用については、AT1a受容体に対する親和性が非常に高いためにAT1a受容体刺激の阻害のみでなく、AT2受容体刺激が増強されたことに起因すると考察した。