2003.10.17

【DDW-Japan 2003速報】 PPIとAMPCの「2剤高用量分割投与」、初回除菌失敗例のほぼ全例でピロリ除菌に成功

 ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法で今一番問題になっている「初回除菌失敗後の二次除菌」に対し、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と抗菌薬のアモキシシリン(AMPC;商品名:パセトシン、サワシリン、アモリンなど)の2剤を高用量で分割投与する戦略が、極めて有効であることがわかった。症例数は約60人とまだ少ないが、96〜100%の除菌率を達成したという。浜松医科大学第一内科の古田隆久氏らによる研究で、10月16日のシンポジウム「H. Pylori除菌療法の総括と新しい展開−適応・診断・治療−」で発表された。

 H.ピロリ菌除菌のゴールデン・スタンダードは、PPIとAMPC、クラリスロマイシン(CAM;商品名:クラリス、クラリシッド)の3剤を1日2回、1週間服用するPAC療法。しかし、CAM耐性菌の増加に伴い、初回治療の除菌率が徐々に低下しており、初回治療が失敗した場合の二次除菌をどうするかが急務の課題となっている。

 二次除菌療法候補として臨床現場からの期待が最も大きいのが、CAMの代わりにトリコモナス症治療薬のメトロニダゾール(MNZ;商品名:フラジールなど)を用いるPAM療法。日本ヘリコバクター学会の改訂ガイドラインが事実上推奨する除菌療法だが(関連トピックス参照)、MNZには除菌療法に対する保険適用がなく、使用経験を持つ医師も少ない。そのため、使い慣れた薬のみで行える二次除菌療法へのニーズも高まっていた。

 古田氏らは、市販のPPI3剤やCAMは代謝酵素チトクロムP450(CYP)の分子種2C19(CYP 2C19)で代謝されるが、代謝速度には遺伝子型による個人差があり、CYP2C19の遺伝子多型により除菌成功率が異なるとの報告があることに着目。PAC療法を受けた約300人の初回治療患者のデータを分析したところ、除菌に失敗した人にはCAM耐性菌の保有者が多いだけでなく、CYP2C19による代謝速度が速い人が多いことを見出した。

 除菌失敗の要因として、CAM耐性のほか、薬剤代謝のスピードも深く関与している−−。こう考えた古田氏らは、海外報告も参考に、PAC療法からCAMを除き、AMPCの1日量をわが国の除菌承認用量の1.33〜1.5倍、PPIの1日量を承認用量の2〜3倍に増やした上で、1日3〜4回に分割して2週間投与する「2剤併用高用量分割投与法」を考案。PAC療法で除菌できなかった患者を対象に効果を調べた。

 ちなみに、薬剤の分割投与は高い血中濃度を維持するための定法で、特に代謝が早い薬剤では、同じ量を1回投与するより頻回に分けた方が平均血中濃度が高く維持されることがわかっている。また、H.ピロリ菌はCAMやMNZに対する耐性を獲得することが知られているが、AMPCに対する耐性菌は極めてまれだ。

 古田氏らはこれまで、58人の初回除菌失敗患者にこの新戦略を適用したが、除菌率は薬剤の組み合わせや分割数によらず96〜100%と非常に高く、MNZを用いるPAM療法と遜色のないレベルになった。有用性の判断には対照群を置いた無作為化試験を行い、除菌率だけでなく副作用や治療中断率なども含めた総合的な評価が必要になるが、「PPIとAMPCの高用量2剤分割投与は、PAC療法失敗例に対する有効な二次除菌療法の一つ」と古田氏は考察している。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.10.17 DDW-Japan 2003速報】保険重視からエビデンス重視へ−−H.ピロリ菌診療ガイドライン改訂版の骨子が紹介


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