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2003.10.06

【国際動脈硬化学会速報】 欧米や日本の牛乳を飲むと動脈硬化になりやすい?

 日本や欧米で飲まれる牛乳に多く含まれるタンパク質「βカゼインA1」は動脈硬化を引き起こす性質が強い――健康のためにココアをよく飲む人や、成長期の子どもを持つ親にとってはちょっとショックな研究結果が10月2日のポスターセッション「Nutrition」で報告された。

 オーストラリアのQueensland大学バイオメディカル科学校のKristy A. Tailford氏らの研究グループは、ウサギ60匹を無作為に10グループに分け、3グループにはβカゼインA1、βカゼインA2、乳タンパクの一種であるホエイをそれぞれ10%含むエサを与えた。また7グループには、0.5%のコレステロールに加え、βカゼインA1(5%、10%、20%)、βカゼインA2(5%、10%、20%)、ホエイ20%をそれぞれ含むエサを与え、6週間飼育した。各個体に対して、右頸動脈にバルーン傷害を与えた。

 その結果、血清総コレステロール濃度、HDLに対するLDLの比率、大動脈内壁のうち脂肪線条(fatty streak)に覆われた面積については、コレステロール未投与群では、βカゼインA2の10%投与群はβカゼインA1の10%投与群に対して、有意に少なかった。しかし、コレステロール投与したA1の10%投与群とA2の10%投与群では、いずれも有意差が見られなかった。

 これに対して、大動脈弓の内膜中膜厚比(intima media ratio)から脂肪線条の厚みを計測したところ、コレステロール未投与群では、βカゼインA1の10%投与群が平均0.04であったのに対してβカゼインA2の10%投与群とホエイ投与群は平均0.0、コレステロール投与群でも、A1投与群が平均0.07だったのに対して、A2投与群では平均0.0といずれの場合でもA1投与群が有意に厚かった。

 一方、バルーン傷害モデルで頸動脈の内膜中膜厚比(intima media ratio)を計測したところ、コレステロールの投与、未投与にかかわらず有意差は見られなかった。

 これらの実験結果から、ウサギにおいては、βカゼインA1はβカゼインA2に比べて、血清コレステロール濃度や、HDLに対するLDLの比率を増加させる働きがあり、また、動脈硬化の前段階である脂肪線条の面積や厚みをより強く増大させる働きがあることが明らかになった。

 βカゼインA1とA2の割合は乳牛の種類によって異なる。欧米や日本で最も多く飼育されているホルスタイン種では63%、アイルシャー(エイシャー)種では67%をA1が占める。これに対してアフリカなどで飼育されているボスインディカス種(熱帯種)では、A1は1%未満で98〜100%がA2だという。熱帯種の牛乳や肉をタンパク源としているマサイ族などでは、虚血性心疾患が極めて少ないという。

 こうしたことからTailford氏らは、「今後交配によってβカゼインA1の比率が少ない乳牛を増加させることは可能なはずであり、少なくとも心血管疾患の遺伝的素因を持つ子どもたちに対しては、100%βカゼインA2の牛乳を与えるようにすべきだ」としている。(中沢真也)