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2003.10.05

皮膚癌既往者のセレン服用は逆効果−−NPC試験より

 微量元素のセレンには、前立腺癌など様々な癌を予防する効果が示唆されているが、皮膚癌に関しては逆効果であることがわかった。セレンの種々の癌に対する予防効果を示唆した「NPC」試験(the Nutritional Prevention of Cancer Trial)の最終結果がようやくまとまり、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌10月1日号に掲載された。

 NPC試験は、「癌予防に役立つ食品(成分)の評価」を目的に、1983年からスタートした無作為化プラセボ対照試験。試験の対象者には、再発しやすい癌種の一つである皮膚癌(メラノーマは除く)の既往者が選ばれた。介入する食品成分としては、皮膚癌患者の血中セレン濃度が健常人より低く、動物実験で皮膚癌予防効果が示されたことから、セレン(1日量200μg、連日服用)が選定された。

 当初は10年間追跡して皮膚癌予防効果をみる予定だったが、中間解析で、皮膚癌に関しては明確な予防効果がみられなかったものの、その他の癌の発症率や癌による死亡率がプラセボ群よりセレン群で低い傾向がみられた。そこで、試験を3年間延長し、皮膚癌以外の癌についても予防効果を評価することになった。

 その結果、セレン服用者では追跡期間中の癌発症率が相対的に25%、癌による死亡率が41%、プラセボ群より有意に低いことが判明。癌種別では前立腺癌の発症率が52%有意に少なく、有意差は付かなかったが肺癌は54%、大腸癌は41%、発症率が相対的に低くなる傾向が認められた(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev;11,630,2002)。ただし、肝心の皮膚癌予防効果に関しては、これまで詳細な結果が発表されていなかった。

 試験の対象者は非メラノーマ皮膚癌の既往がある1312人で、平均年齢は63歳、4分の3が男性。血清中セレン濃度の平均値は114ng/mlだった。試験が終了した1996年1月時点で、既に25%が他界しており、22%に皮膚癌の再発が認められた。平均追跡期間は7.9年。

 年齢、性別や喫煙歴、皮膚への日光傷害の重症度などで補正した後に非メラノーマ皮膚癌の再発率を比較すると、セレン群ではプラセボ群よりも相対的に17%、皮膚癌の再発率が有意に高いことが判明。非メラノーマ皮膚癌の種類別では、基底細胞癌(BCC)の再発率に有意差はなかったが、有棘細胞癌(SCC)では相対的に25%、セレン服用者でプラセボ服用者より再発率が有意に高かった。

 次に研究グループは、試験登録時の血中セレン濃度で3群に分け、セレン服用が非メラノーマ皮膚癌再発に及ぼす影響を評価した。すると、セレン濃度が低いグループ(105.2ng/ml以下)ではセレン群とプラセボ群に有意差は認められなかったが、中間グループ(105.6〜122.0ng/ml)、高値グループ(122.4ng/ml以上)では、交絡因子で補正後もセレン群で皮膚癌再発率が有意に高い(ハザード比:順に1.49、1.59)ことがわかった。

 非メラノーマ皮膚癌の既往者では、セレンに癌再発抑制効果が認められないばかりか、セレンの血中濃度が比較的高い人では再発率が5〜6割増しにもなる−−。この結果に対し研究グループは「癌全体に対する抑制効果があることも考慮すべき」としつつも、「セレンの血中濃度が比較的高い非メラノーマ癌既往者は、セレン服用による癌予防効果を最も受けにくい」と結論付けている。

 セレンは牡蠣やマグロなどの魚介類のほか、レバーなど動物の内臓や玄米、小麦胚芽などに豊富に含まれている微量元素。癌予防に対する効果が最も注目されている食品成分の一つで、「NPC」試験で有意な予防効果がみられた前立腺癌については、2001年から米国国立癌研究所(NCI)の助成研究として大規模前向き試験の「SELECT」(the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial)がスタートしている。 だが、こと非メラノーマ皮膚癌の既往者に関しては、再発予防を期待してのサプリメント服用は避けた方が良さそうだ。

 この論文のタイトルは、「Selenium Supplementation and Secondary Prevention of Nonmelanoma Skin Cancer in a Randomized Trial」。アブストラクトは、こちらまで。「NPC」試験の詳細を報告した2002年の論文「Baseline Characteristics and the Effect of Selenium Supplementation on Cancer Incidence in a Randomized Clinical Trial」は、現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。「SELECT」試験に関しては、「SELECT」試験のホームページまで。(内山郁子)