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2003.09.10

【日本心臓病学会速報】 AMI患者の“動脈硬化指数”と梗塞サイズに相関、発症機序に違いか

 再疎通が得られた急性前壁梗塞患者110人を対象とした解析で、いわゆる“動脈硬化指数”が高値か低値かにより、梗塞サイズなどに明らかな違いがあることがわかった。総コレステロール(TC)値と高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の比(TC/HDL比)が高い人には「梗塞サイズが大きい突然発症型」、TC/HDL比が低い人には「梗塞サイズが小さい安定狭心症、石灰化病変合併型」が多かったという。TC/HDL比の高低が発症機序の差異を反映している可能性を示すもので、臨床像を考える上で有意義な指標となりそうだ。研究結果は、横浜市立大学市民総合医療センター循環器内科の小菅雅美氏らが、9月9日の一般口演で発表した。

 小菅氏らは、急性冠症候群(ACS)患者では、TC/HDL比の上昇とプラーク破綻とに関連があると報告されていることに着目。前壁の心筋梗塞(完全閉塞)を初めて発症、6時間以内に再疎通(自然開通も含む)が確認され、24時間以内に血清脂質を測定した110人を対象に、TC/HDL比と発症パターンや梗塞サイズなどの臨床像との関連を調べた。なお、血清脂質に影響を与える抗高脂血症治療薬の服用者は対象から除いている。

 TC/HDL比が上位3分の1に入った「高値群」(36人)の平均年齢は57歳で、同比が下位3分の1の「低値群」(36人、平均年齢64歳)より7歳有意に若い。男性比率も高値群(86%)で低値群(64%)より有意に多かった。経皮的冠動脈インターベンション術(PCI)の適用率、再疎通までの時間や、梗塞責任部位、病変枝数などには有意差がなかった。血清脂質は高値群でTC、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値が有意に高く、HDLコレステロール値が有意に低いほか、トリグリセリド値も有意に高かった。

 冠動脈造影で評価した石灰化病変(静止画像での高度石灰化)は、低値群の責任病変の6割弱に認められ、高値群(約2割)より有意に多かった。逆に、責任病変のプラーク内潰瘍形成(ulceration)は、高値群の自然再疎通・血栓溶解療法施行例の3割を占めたが、低値群では1例もなかった。梗塞前に狭心症があったのは、高値群では半数のみで、低値群の7割より少ない。狭心症の病態にも違いがあり、低値群で安定狭心症が多かった。

 さらに、平均白血球数、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の最高値や再疎通前のST上昇幅はいずれも高値群で高く、高値群では心筋傷害が高度で梗塞サイズも大きいことがわかった。退院時の左室機能は高値群で有意に低かった。

 以上から小菅氏らは、「急性前壁梗塞で再疎通が得られた人では、急性期の血清脂質パターンと、臨床像とに相関がある」と総括。TC/HDL比の高低で、急性心筋梗塞の発症メカニズムが異なる可能性があると結論付けた。

 発表後の質疑応答では、「高齢者はTCが低く、安定狭心症からの発症が多く、石灰化病変が多いことが知られている。今回の結果は年齢差を反映しているだけという可能性はないか」「この研究では多変量解析が行われていないが、TC/HDL比は病態予測の上で独立した因子になり得るのか」との質問が出された。

 小菅氏は、年齢が大きな交絡因子となり得ることを認めた上で、「若年者に絞った解析でも同様の結果が出ている」と回答。独立因子か否かについては、交絡因子の補正を行っていないので不明としつつも、「他の研究グループからも、LDL/HDL比と血管内超音波(IVUS)像との関連が報告されており、病態をある程度反映すると考えられるのでは」と述べた。(内山郁子)