2003.09.05

【外来小児科学会速報】 “元気の出る”東北初のこども病院、今年11月に開院

 米国では小児専門病院が140あるのに対し、日本にはわずか27しかない。しかもその多くは首都圏と中部、近畿地方に集中しており、東北地方にはこれまで一つもなかった。しかし、今年11月に、宮城県に待望の東北初の小児専門病院「宮城県立こども病院」が開院する。設計理念は「元気の出るファミリーホスピタル」。これまでの医療の常識をすべて捨て、理想のこども病院設立を目指すという。病院は「街」、病室は「家」という発想を取り入れる、家族の参画を重視し、ICU、NICUは24時間面会自由、ボランティア活動拠点となるボランティアハウスを敷地内に設置する、など新機軸に満ちている。同病院副院長の堺武男氏が、8月31日の特別講演3で、設立の経緯と新病院の概要について報告した。

 東北地方に小児専門病院を設立する動きは1960年代にまでさかのぼる。1969年に東北大学小児科が、小児病院設立要望書を作成した記録があるようだ。しかし、本格的な開設に向けての動きが始まったのは1990年代に入ってから。1993年に宮城県母子総合医療センター設立推進協議会ができ、これが活動の母体になった。最終的には東北大学小児科が中心になって集めた20万もの署名が開院の直接のきっかけになった。知事がゴーサインを出し、2001年11月末、着工にこぎ着けた。

 診療の主軸は、周産期医療、循環器疾患、血液・腫瘍疾患、精神神経疾患に置き、東北大学と連携して高次医療を担う。しかし、当たり前に見えるのはこの診療機能だけで、ほかはあらゆる新機軸に満ちている。

 まず、ICU、NICUは原則として24時間面会自由。ICUはガウン不要、手術場、ICU、NICUなどは履き替えの必要がない。超低体重出生児にも一定の条件で母親が抱くカンガルーケアを取り入れる。そのかわり、デベロップメントケアの発想を取り入れ、NICUには騒音・光対策を施すという。医療方針決定には家族の参画を行い、家族も含めた退院ケアを行う。

 病院らしさの払拭にはとりわけ念を入れる。病院は「街」、病棟は「界隈」、病室は「家」という発想。子どもにとって病院に入った感じがしない居心地の良さを狙う。従来の待合室スペースは「魔法の広場」、エレベーターは「おかしのエレベーター」。病棟は個室60室、4床室12室と個室中心で、すべてのベッドに窓がつく。床は病棟からICU、NICUまで木目調にしている。院内教育を重視し、小学生用に三つ、中学生用に二つの教室を備えている。家族は徒歩圏にあるマクドナルド提供のドナルドハウスに1泊1000円で宿泊できる。禁煙対策を徹底し、喫煙者は採用しない、という。両親に対する禁煙教育プログラムも用意するという。

 「病院らしくない病院にするために何をすべきかを患者の視点で考え直し、不要なルーチンは大胆にやめる。壮大な実験としての環境を用意する」(堺氏)と強調する。こうした革新性を維持し続けるのは容易なことではないが、新しい小児医療の新拠点として、成果が問われることになる。(中沢真也)

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