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2003.07.26

αグルコシダーゼ阻害薬がIGT者の心血管疾患を3年で5割、高血圧発症を4割抑制−−STOP-NIDDMサブ解析より

 糖吸収を阻害して食後高血糖を抑制する、αグルコシダーゼ阻害薬のアカルボース(わが国での商品名:グルコバイ)に、耐糖能異常(IGT)がある肥満中高年者の心血管疾患や高血圧発症を抑制する効果がある−−。昨年6月の国際高血圧学会(ISH)で発表され(関連トピックス参照)、大きな注目を集めた研究結果の原著論文が、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌7月23/30日号に掲載された。

 この研究は、糖尿病の発症リスクが高いIGT者1400人を対象に、糖尿病の発症予防効果をみた「STOP-NIDDM」(Study TO Prevent Non-insulin-dependent diabetes mellitus)試験のサブ解析。同試験では、プラセボ群よりアカルボース群で、相対的に25%糖尿病の発症が抑制されるとの結果が得られている(関連トピックス参照)。

 今回のサブ解析は、「心血管疾患」と「高血圧」について、発症率をプラセボ群とアカルボース群とで比較したもの。プラセボまたはアカルボース(1回量:100mg)を1日3回服用、平均3.3年後の予後を比較した。対象者の平均年齢は54.5歳、男女比はほぼ半々で、体格指数(BMI)は30.9。試験開始時の血圧の平均値は、アカルボース群が131.4/82.8mmHg、プラセボ群が130.9/82.0mmHgで、アカルボース群の52%、プラセボ群の50%が高血圧(降圧薬非服用時の血圧値が140/90mmHg以上)と診断されていた。

 なお、プラセボ群のうち29人、アカルボース群の32人は、データ不十分などの理由により解析から除外された。また、アカルボース群のうち211人(同群解析対象者の31%)、プラセボ群の130人(同:19%)は、副作用などのため試験から早期脱落しているが、解析はこれらの脱落者も含めたITT(intent-to treat)形式で行っている。

 その結果、追跡期間中にプラセボ群(解析対象人数:686人)の32人、アカルボース群(同:682人)の15人が、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの心血管イベントを発症。血圧など主要な危険因子で補正後も、ハザード比は0.47(95%信頼区間:0.24〜0.90)となり、アカルボース群で相対的に53%、心血管イベントを抑制し得ることがわかった。

 また、追跡期間中に新たに高血圧を発症した比率は、アカルボース群が11%(78人)で、プラセボ群の17%(115人)より有意に低いことが判明。主要な危険因子で補正後のハザード比は0.62(同:0.45〜0.86)となり、高血圧の新規発症を相対的に58%抑制できるとの結果になった。

 このサブ解析は、食後高血糖が心血管疾患の危険因子であるとの仮説を検証した初のプラセボ対照介入試験だが、興味深いことに、アカルボースによる食後高血糖の改善度(75gブドウ糖負荷試験=OGTTの2時間値で評価)と心血管イベントの発症との間に有意な相関は認められない。アカルボース群では、血圧やBMI、腹部周囲径など他の危険因子が有意に改善されており、これらの複合的な効果により心血管イベントの抑制効果が現れた可能性があると研究グループは考察、OGTT2時間値は同薬の効果を評価するマーカーとしては適切ではない可能性もあると指摘する。

 いずれにせよ、“食後高血糖への介入”が直接あるいは間接的に心血管イベントを抑制し、糖尿病だけでなく高血圧の新規発症をも予防したことの持つ意義は大きい。IGT者を医療の対象とすべきかとの議論はあるものの、αグルコシダーゼ阻害薬などによる、食後高血糖をターゲットとした介入戦略は、治療・予防の両面から今後も精力的な探求が進められるだろう。より副作用が少なく、服薬を継続しやすい(服薬回数が少ない、あるいは服薬方法が容易な)薬剤での効果検証も待たれるところだ。

 この論文のタイトルは、「Acarbose Treatment and the Risk of Cardiovascular Disease and Hypertension in Patients With Impaired Glucose Tolerance: The STOP-NIDDM Trial」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.6.25 ISH速報】αグルコシダーゼ薬がIGT者の高血圧発症も予防−STOP-NIDDMサブ解析より
◆ 2002.6.19 STOP-NIDDM試験の原著論文がLancet誌に掲載、αグルコシダーゼ薬がIGT者の糖尿病発症を予防