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2003.07.23

市民マラソンランナーはご用心、今、常識の「できるだけ水分を摂る」は危険

 女子選手の活躍もあって、日本でも市民マラソンの人気が年ごとに高まっている。こうした長距離走における体調管理で最も大切なのが水分摂取だ。最近の常識は、「喉が渇く前に十分飲む」というもの。のどの渇きを満たしただけでは水分不足が生じるという知識は、マラソンランナーの多くが書籍や指導者、仲間から聞かされる。ところが、この“常識”が時に死に至る危険をもたらすと指摘した論説(Editorial)が、British Medical Journal誌の2003年7月7日号に掲載された。

 南アフリカCape Town大学人類生物学部のTimothy David Noakes氏は、運動中の水分摂取に関する既存のガイドラインは次の四つの前提に基づいているという。1.運動中の健康をおびやかす最大の危険は水分不足であり、運動中の体重減少は補う必要がある、2.のどの渇きを満たすだけでは真の水分欠乏を解消できない、3.運動中の水分補給の必要性はどの運動でも同様、4.大量の水分摂取は無害。この結果、アスリートは、体重減少に匹敵する量か、飲める限り多く飲む量として1時間に600〜1200ml飲むことが推奨されている。

 しかし、これらの前提はエビデンスに基づいたものではないという。こうした「飲めるだけ飲むべき」とする常識がもたらす危険の一つが血液の希釈による低ナトリウム血性脳症だ。医学文献に報告されているだけで、少なくとも7人の死亡と、250人以上の症例が報告されているという。

 Noakes氏は、水分の過剰摂取は有害無益であり、時に致命的な結果を招くことを周知する必要があると強調する。「おそらく(現段階での)最良の水分摂取法は、のどの渇きに応じて飲むことで、標準的な分量は1時間当たり400〜800ml、体格や運動の激しさによって増減すべきだ」。

 日本ではマラソンランナーの推奨摂取量は15分間ごとに200ml程度とされている。体格差を考慮すると、もう少し少なくてもよい計算になる。常識としてきた「できるだけ水分を摂る」の見直しが急務となっているようだ。

 本論文の原題は、「Overconsumption of fluids by Athletes」。全文はこちらまで。(中沢真也)