2003.07.14

天然痘ワクチン接種者から拡張型心筋症2例、米AHAも警戒声明

 軍関係者や民間の医療従事者に対する天然痘ワクチンの接種を進めている米国で、接種を受けた民間医療従事者のうち二人が拡張型心筋症(DCM)を発症したことが、米国疾病予防センター(CDC)の調べでわかった。7月11日付けの疾病・死亡週報(MMWR)で報告した。天然痘ワクチンによるDCMの発症報告は今回が初めてで、この報告を受け、米国心臓協会(AHA)は同日、DCMを含む循環器系副作用への警戒を強めるよう循環器専門医に呼びかける声明を発表した。

 米国ではテロ対策の一環として、まず軍関係者、次いで今年1月から民間医療従事者に対し、天然痘ワクチンの接種を開始している。しかし、発熱や発疹、頭痛など既知の副作用に加え、虚血性心疾患や心筋炎など循環器系の副作用が生じることが判明。副作用発現率も民間人では約1700人に一人と、軍関係者(約1万2000人に一人)より高く、CDCは定期的に集積された副作用情報を公開して注意を促してきた。

 CDCによると、民間へのワクチン接種が始まった1月24日から6月20日までに、計3万7802人の民間人(医療従事者や保健所職員)が天然痘ワクチンの接種を受けた。ワクチン副作用報告制度(Vaccine Adverse Event Reporting System;VAERS)を通してCDCに報告された循環器副作用は、DCM2例のほか、心筋・心膜炎が21例、虚血性心疾患が8例となっている。

 今回報告されたDCM症例は2例で、二人とも50歳代の女性。ワクチンの2回目の接種(追加接種)後、疲労感や筋肉痛・関節痛などを感じ、3カ月後にDCMと診断された。二人とも、高血圧や肥満など心血管疾患の危険因子は持っていたが、心疾患の既往はなかった。

 二人は適切な治療を受けて仕事に復帰したというが、CDCによると、DCMに罹患すると1年以内に4分の1、5年以内に半数が死亡するとの報告もあるという。

 この報告を受け、AHAは「DCMの発症は3万8000人中の二人だけで、これだけでは天然痘ワクチンによりDCMが引き起こされたとは結論できない」としながらも、一般にDCMの半数は原因がわからない(特発性DCM)ことを鑑みると可能性は否定できないと結論。CDCの報告に関するサマリーを、同学会の学術誌であるCirculation誌のホームページ上に近く掲載し、循環器専門医に対して、天然痘ワクチンの副作用として生じ得る心血管系障害への一層の注意を呼びかけると発表した。

 なお、わが国では厚生科学審議会の大規模感染症事前対応専門委員会が昨年3月、天然痘を含む生物テロ対策に関する報告書を答申。この答申を受け厚生労働省は、天然痘ウイルスによる生物テロの蓋然性が高まった場合(レベル2;他国において天然痘患者が発生し、生物テロとの関係が強く示唆される場合など)、医療従事者や保健所職員、自治体職員などに対して天然痘ワクチンを接種するとの方針を打ち出している。

 この件に関するCDCの報告書「Update:Cardiac and Other Adverse Events Following Civilian Smallpox Vaccination -- United States, 2003」は、現在こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。生物テロに関する厚生科学審議会の委員会答申はこちら、厚生労働省のテロ対策に関しては、「『国内の緊急テロ対策関係』ホームページ」まで。(内山郁子)

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