2003.06.19

【SARS速報】 SARS世界専門者会議、1000人以上の科学者、医師らが参加

 世界保健機関(WHO)によるSARS世界専門者会議が6月17日と18日にマレーシアのクアラルンプールで開かれ、1000人以上の科学者、医師らが参加した。

 WHOの発表によると、会議は感染症担当責任者であるDavid Heymann氏による、この3カ月のSARS概観報告で幕を開けた。続いて登壇した感染症担当部長のGuenael Rodier氏は、SARS制圧を可能にした関係各国の連携、国際協調で果たしたWHOの役割を強調した。また中国、ベトナム、シンガポールなど感染者が多く出た各国から現状報告があった。

 この会議で注目されたのは、様々な角度から取り組まれている研究の進捗状況の報告である。例えば、SARSコロナウイルスの起源、SARS検査薬・ワクチンの開発状況などだが、残念ながらいずれも目立った進展はなかった。

 臨床診断、治療に関する報告では、死亡率には年齢(65歳以上では50%を超える)、性別、好中球・リンパ球の数が関係するらしいこと、SARSの症状には3段階あること、リバビリンなどの坑ウイルス薬とメチルプレドニゾロンなどの免疫抑制剤の併用で効果が示唆されたことなどが報告された。

 一方、SARS検査法は、標準的な方法はまだ確立されていない。感染の初期には、ウイルスがほとんど排泄されないため、ELISA、蛍光抗体法やウエスタンブロット法は役に立たない。PCR法は有効だとされているが、標準化されておらず、さらに検証と品質保証が必要との指摘があった。

 ワクチンの開発も緒についたばかりで、SARSに関する科学的知見をまず蓄積しなければならないことが再確認された。検査法の確立、ワクチン開発ともに早急に必要なのは、基準となるウイルス・血清、すなわち標準試薬の確立とウイルスの核酸配列のデータベース作りである。

 ウイルス起源についても、初期の病気発生状況から見て、家畜・狩猟動物から人への感染の可能性が指摘されているが、いまだに定かでない。少なくとも、豚や鶏類が感染に関与していないことを示唆する報告があっただけだった。

 今回のSARS流行で威力を発揮したものとして、インターネットが強調された。世界中の研究者たちがインターネットを通じてネットワークを構築し、SARSの病原菌の究明、遺伝子配列の決定、臨床的特徴の明確化、感染方法の探索などを「記録的な速さで」行った点が強調された。また、世界中にSARS情報を流し警戒態勢が広く行き渡ったのもインターネットによるものであった。

 会議でもっとも強調されたのは、正確な診断検査法の開発である。これが実現しなければ、少しでも異常な肺炎はSARSと疑われ、パニックにつながりかねないからだ。

 SARS患者が一人でも存在する限り、あるいはウイルスの起源が明らかにされない限り、SARSに対する警戒を止めることはできないだろう。

 SARS世界専門者会議については、WHOのホームページで公開されている。(千田柳子、医学リポーター)

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