2003.06.18

抗酸化ビタミンに心血管疾患の予防効果なし、大規模介入試験のメタ分析で判明

 ビタミンEとβカロテンに関する大規模無作為化介入試験のメタ分析で、これらの抗酸化ビタミンに、総死亡や心血管死亡を予防する効果がないことがわかった。特にβカロテンでは、絶対値は小さいものの有意に総死亡・心血管死亡の増加が認められ、研究グループは「βカロテンや、その生理学的活性代謝物であるビタミンAを含むサプリメントの使用は控えるべきで、βカロテンを用いた介入試験も中止すべき」と勧告している。研究結果は、Lancet誌6月14日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Cleveland Clinic財団のDeepak P. Vivekananthan氏ら。代表的な医学論文データベースの「メドライン」などを用い、ビタミンEやβカロテンを用いた無作為化介入試験を抽出。出版バイアスを避けるため、対象者数が1000人以上の大規模試験に絞り、総死亡と心血管死亡に関して予防効果を評価した。なお、対象には、心血管疾患予防を主目的(1次評価項目)とはしていない臨床試験も含めた。

 メタ分析の対象試験は、βカロテンが「CARET」「HPS」(関連トピックス参照)「NSCP」「PHS」「WHS」など8試験で、ビタミンEが「CHAOS」「HOPE」「HPS」など7試験。対象者総数はβカロテン試験が13万8113人、ビタミンE試験が8万1788人となった。

 その結果、βカロテンに関しては、βカロテン群の総死亡率が7.4%と、わずかながら有意に対照群(7.0%)を上回ることが判明(オッズ比:1.07、95%信頼区間:1.02〜1.11)。心血管死亡率も同様に、3.4%対3.1%となり、絶対値は小さいものの有意にβカロチン服用者で死亡率が高いことがわかった(オッズ比:1.1、95%信頼区間:1.03〜1.17)。

 一方のビタミンEでは、総死亡率がビタミンE群で11.3%、対照群で11.1%となり、両群間に有意差はなかった(オッズ比:1.02、95%信頼区間:0.98〜1.06)。心血管死亡率にも有意差がなく(両群とも6.0%、オッズ比:1.0、95%信頼区間:0.94〜1.06)、ビタミンEには総死亡や心血管死亡を予防する効果が認められないとの結果になった。

 研究グループはビタミンEに関し、天然型が合成型より生理学的活性が高く、それが心血管疾患などの予防効果に影響しているとの説にも言及。天然型ビタミンEを用いた「HOPE」「CHAOS」の2試験で、確実な(ハードな)評価項目で対照群との差が認められなかったことを鑑みると、天然型と合成型とで異なる臨床効果があるとの仮説は論破されたとの見解を示している。

 抗酸化ビタミンが動脈硬化性疾患の予防に役立つとの考え方は、酸化ストレスが動脈硬化性疾患を促進するとの“酸化ストレス仮説”に基づくもので、わが国の専門医の処方動向にも一定の影響を与えている(関連トピックス参照)。今回のメタ分析結果は、酸化ストレス仮説そのものを否定するものではないが、少なくともビタミンEやβカロテンの“予防効果”には大きな疑問符が付いたと言えそうだ。

 この論文のタイトルは、「Use of antioxidant vitamins for the prevention of cardiovascular disease: meta-analysis of randomised trials」。アブストラクトは、こちらまで。この件に関するCleveland Clinic財団のプレス・リリースは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.8 HPS研究が待望の論文化、米の高脂血症治療ガイドラインにも影響か
◆ 2003.3.30 日本循環器学会速報】動脈硬化性疾患への「抗酸化薬」、半数が処方経験なし−−コントロバーシー4より

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