2003.05.28

好中球減少による発熱、広域βラクタムの単剤投与にメリット

 好中球減少による発熱患者を対象に、βラクタム系抗菌薬の単剤投与とβラクタム・アミノ配糖体薬の併用投与とを比較した無作為化試験のメタ分析で、総死亡には違いがないものの、「治療失敗率や副作用の観点からβラクタムの単剤投与が優れる」との検討結果が報告された。ただし、臨床試験の多くは小規模で試験間差異が大きく、大半の試験では単剤投与と併用投与とで使用したβラクタム系抗菌薬の種類が異なるなどの限界もあり、明確な結論を得るには大規模試験の実施が不可欠なようだ。研究結果は、British Medical Journal(BMJ)誌5月24日号に掲載された。

 化学療法を受けている癌患者は、しばしば好中球の減少を起こすが、好中球が少ないため病原体に感染しても肺炎や膿尿など明瞭な炎症症状が現れないことが多い。感染症を疑う手掛かりは発熱で、放置すると菌血症などに進展する恐れがあるため、起炎菌の同定を待たずに抗菌薬を経験的(empirical)に投与するのが標準的な対処法だ。

 米国感染症学会(IDSA)が2002年3月に発表したガイドラインでは、このような患者に抗菌薬を静注する場合、カルバペネム系やセフェム系などのβラクタム系薬の単剤投与、またはβラクタム系薬とアミノ配糖体系抗菌薬との併用投与を推奨している。しかし、単剤投与と併用投与のどちらが優れるかに関しては、明確なエビデンスが得られていなかった。

 イスラエルRabin医療センターのMical Paul氏らは、代表的な医学論文データベースである「メドライン」や学会発表抄録などから、2002年までに発表された無作為化研究を抽出。総死亡を1次評価項目、治療失敗率や副作用発現率を2次評価項目としてメタ分析を行い、βラクタム系薬の単剤投与とβラクタム・アミノ配糖体の併用療法とを比較した。

 メタ分析の対象研究数は47件、総患者数は7807人で、患者の9割は血液疾患、6割は重度の好中球減少(好中球数:100/mm3未満)だった。菌血症は24%にみられたが、カルバペネム系薬への耐性菌が問題となっているPseudomonas aeruginosaが単離されたのは2%(グラム陰性菌感染の15%)のみだった。3分の2の試験では、グラム陰性菌よりもグラム陽性菌感染の方が頻度が高かった。総死亡は平均すると6.2%で、後に発表された臨床試験ほど死亡率が下がる傾向があった。

 その結果、1次評価項目である総死亡の相対リスクは0.85(95%信頼区間:0.72〜1.02)で、βラクタム系薬の単剤投与の方が少ない傾向はあったものの、有意差はなかった。一方、二次評価項目である治療失敗の相対リスクは0.92(同:0.85〜0.99)で、有意に単剤投与の方が少なかった。副作用に関してはβラクタム・アミノ配糖体の併用療法で明らかに多く、特に腎不全の発生率はほぼ2倍だった(単剤投与の相対リスク:0.49、95%信頼区間:0.36〜0.65)。

 以上から研究グループは「好中球減少があり発熱している患者に対し、βラクタム・アミノ配糖体の併用療法には(単剤療法と比べ)臨床的な優位性がない」と結論。臨床試験で効果が確かめられている単剤投与のβラクタム系薬の大半が広域抗菌薬であることから、広域βラクタム系薬の単剤投与を、こうした患者に対する標準的な治療法とすべきとした。

 ただし、単剤投与と併用療法とを比較した臨床試験の大半で、単剤投与群に用いたβラクタム系薬(カルバペネム系薬や第3、4世代セフェム系薬など)と、併用投与群に用いたβラクタム系薬(第1、2世代セフェム系薬やウレイドペニシリン系薬など)が異なっていることは、結果を解釈する上で留意すべき点。こうした点を勘案し、研究グループは、総死亡を第1評価項目に、同じ広域βラクタム系薬を両群に用いた、単剤投与と併用療法との大規模比較試験を行うよう提言している。

 この論文のタイトルは、「β lactam monotherapy versus β lactam-aminoglycoside combination therapy for fever with neutropenia: systematic review and meta-analysis」。現在、全文をこちらで閲読できる。IDSAのガイドライン「2002 Guidelines for the Use of Antimicrobial Agents in Neutropenic Patients with Cancer」は、こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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