2003.05.12

【日本内分泌学会速報】 血糖コントロールで骨強度が改善、2型糖尿病モデルラットを使った実験で判明

 2型糖尿病を自然発症するラットを用いた実験で、発症から一定期間後に食後高血糖改善薬を餌に加え、血糖をコントロールすると、薬を餌に加えなかった対照ラットよりも骨強度が高まることがわかった。2型糖尿病の人は骨折しやすいことが知られているが、今回の実験結果は、血糖コントロールが骨折予防に重要であることを示唆するものと言えそうだ。研究結果は、埼玉医科大学第四内科の和田誠基氏らが、5月10日の一般口演「骨・副甲状腺3」で報告した。

 近年の疫学研究から、1型糖尿病だけでなく2型糖尿病でも、骨折のリスクが高いことが認識されるようになってきた。視力や筋力の低下により転倒が増えることに加え、インスリンの作用不足による骨の新陳代謝(骨代謝回転)の低下や、高血糖状態が続くことによる骨基質の劣化などが原因と考えられている。

 和田氏らは、肥満により生後6カ月頃から2型糖尿病を自然発症する疾患モデルラット、Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF)50匹を生後12カ月まで飼育。この段階で2群に分け、一方に通常の飼料、他方に糖尿病薬を添加した飼料を与えて、空腹時血糖やヘモグロビンA1c(HbA1c)、体重の変化などを調べた。その後、生後16カ月で犠牲死させて大腿骨の強度や骨形態を評価した。血糖のコントロールには、αグルコシダーゼ阻害薬のアカルボース(商品名:グルコバイ)を用い、100g当たり0.15gを添加した。

 その結果、アカルボース添加飼料を食べたOLETFラットでは、通常の飼料を食べたOLETFラットよりも、空腹時血糖が有意に低く、HbA1cも有意に低くなった。さらに、3点支持試験で調べた大腿骨の骨強度は、アカルボース添加飼料群で有意に高くなることが判明した。

 体重はアカルボース添加群で2割軽く、腹腔内脂肪はほぼ半減していることが確かめられた。大腿骨をCTで調べると、骨形態上は海綿骨などの有意な変化はみられなかったが、骨髄腔内の脂肪がアカルボース添加群で少なかった。

 一般に体重が重いほど、重力負荷によって骨代謝回転が増強され、骨強度は上昇するが、OLETFラットでは体重と骨強度が逆相関することもわかった。OLETFラットでは、アカルボース添加群で骨形成マーカーのオステオカルシン値が有意に低く、骨破壊サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)α値も低下傾向にあり、骨代謝回転は低下していると考えられた。

 今回得られたデータが示唆するのは、2型糖尿病を発症、持続的な高血糖状態が一定期間続いた後にアカルボースを投与すると、骨強度が高まるというもの。「骨強度の回復は、血糖コントロールに伴う骨の質的改善による」と和田氏らはみており、「骨髄腔内で(脂肪が減少した分)増えた様々な細胞が、(高血糖状態の持続により下がった)骨強度の回復に関与しているのでは」と考察している。(内山郁子)

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