2003.05.09

【SARS速報】 高齢者で高いSARS死亡率、潜伏期間は10日を超える場合も−−香港からの報告、Lancet誌HPで早期公開

 世界保健機関(WHO)は5月7日、重症急性呼吸器症候群(SARS)の新たな推定死亡率と潜伏期間を発表したが、同日にはLancet誌ホームページ上でも香港のSARS流行に関する疫学的な解析論文が早期公開された。推定死亡率に関してはWHOの推計と大きな隔たりはなかったものの、潜伏期間に関しては、WHOの「最大10日」とは異なり、感染者の5%で潜伏期間が14日を超えるとの結果になった。

 この論文は、4月28日までにSARSで入院し、転帰や年齢、発症から入院までの期間などの情報が揃っていた患者1425人について、患者の年齢や発症から入院までの期間などが、転帰にどのような影響を与えるかを検討したもの。死亡率には年齢により大きな違いがあったため、60歳未満と以上に分けて推定した。感染から発症までの期間(潜伏期間)は、感染源との接触が1回だけで、接触時期がはっきりしている57人のデータから推計した。

 その結果、60歳未満のSARS患者の死亡率は、パラメトリック法(統計解析の一手法で、母集団が正規分布など特定の確率分布を持つと仮定して推計する)で13.2%、非パラメトリック法で6.8%となった。同様に60歳以上の場合は、パラメトリック法で43.3%、非パラメトリック法で55.0%となり、いずれの手法でも若年者を大きく上回った。発症から入院までの期間(3〜5日、流行後期ほど短縮)と、転帰との相関は認められなかったが、この期間が短いほど患者が早期に隔離されるため、他者への感染リスクが低い傾向がみられたという。

 一方の潜伏期間は平均で6.4日と推計されたが、患者ごとのばらつきがかなり大きく、「95%は感染から14.22日以内に発症する」、つまり5%の人では潜伏期間が2週間を超えると推定できることがわかった。

 WHOが同日発表した新たな推定死亡率は、24歳以下が1%未満、25〜44歳が6%、45〜64歳が15%、65歳以上が50%以上というもの。カナダ、中国、香港、シンガポールとベトナムからの最新データに基づいて推計したとしており、今回香港から発表された解析結果と比べて大きく外れるものではない。

 しかし、潜伏期間に関しては、WHOは今回も「最大で10日」との見方を継続しており、香港の推計値とは“ずれ”がある。潜伏期間に関するWHOの推計は、シンガポール、カナダと欧州のデータに基づくもので、WHOは香港から発表された推計値に関し「(香港での)潜伏期間が長いことは、(SARSの)診断(基準)など方法論的な相違や、感染経路、感染量など他の要因が異なることを反映している可能性がある」とみており、より詳細な検討を行うとしている。

 Lancet誌の論文のタイトルは、「Epidemiological determinants of spread of causal agent of severe acute respiratory syndrome in Hong Kong」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。WHOの新推計値に関しては、WHOホームページの「Update 49 - SARS case fatality ratio, incubation period」まで。(内山郁子)

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