2003.04.07

【日本医学会総会速報】 学会の“形骸化”を厳しく批判、「高度専門医」の設置を提案−−シンポ「医療の質の改善に向けて」より

 日本の学会は、その姿を考えるべき時期にきている−−。4月4日の日本医学会総会で開催されたシンポジウム「医療の質の改善に向けて」では、そんな過激な意見が、シンポジストの一人である日本医科大学医療管理学の高柳和江氏から開陳された。

 「学会は質の保証をできるのか」と題した講演の中で、高柳氏はまず、日本の主要な学会の定款から「学会の目的」を抽出。英米の学会と比較を行った。分析対象は、内科・外科など「基本領域」の学会と、消化器病学会基本領域に上積みする形で研鑚を行う「サブスペシャリティー」学会の、合計31の定款とした。

 すると、国内の学会の第一の目的は「学術の発展(93.5%)」、続いての目的は「会員相互・関連学会などとの連携(32.3%)」であることが判明。一方、英米の内科、外科などの主要な学会では、学術の発展は目的として挙げられておらず、主目的は「患者に最高の医療を提供・保証」することだった。

 まさに対照的な結果となったが、この背景には「日本の学会が“Association”なのに対し、英米の学会が“College”だということがあるのではないか」と高柳氏は分析する。海外の学会は、資格を得るために厳しい試験を行い、学会員ということが専門家であることを保証していると高柳氏は言う。しかし、上記の日本の31学会中28学会では医師以外でも登録を可としており、3学会でも医師であれば登録できる。つまり、「質の高い治療を提供するための組織とはなっていない」(高柳氏)わけだ。

 さらに、2002年に開催された国内31学術総会において、総会参加率は基本領域で27.8%(2001年の会員数1万6715人、2002年の参加人数4647人)。サブスペシャリティーでは34.7%(2001年の会員数1万61人、2002年の参加人数3494人)と、いずれも低い水準に留まった。

 全総会の平均演題数は923.1と多い一方、採択率(発表演題数/発表申し込み数)は82.9%と高率で、その講演の質に対しても疑問が呈された(基本領域の平均演題数977.4、採択率は87.2%。サブスペシャリティーの平均演題数は872.2、採択率は79.1%)。なかには、採択率が100%の学会もあったという。

専門医の上位概念として「高度専門医」を設置、臨床研究の重視や知的所有権の考慮も

 こうしたデータを提示した後、高柳氏は今後の学会のあり方について、具体的な提言を行った。

 第一の提言は、医療の質を保証するため、現在の専門医の上位概念である「高度専門医」を設置すること。現在の日本の医師数は24万人。これに対し専門医の数は21万人であり、複数の学会に所属する医師の数を考えても多い。誰でも専門医を名乗れる形では、「専門医」資格に医療の質を保障するだけの重みが欠けてしまう。

 また、「学会として基礎研究より臨床研究を評価する」ことも提言された。高柳氏は、基礎研究は結果を出すまでの時間が短く、他の論文で引用されやすいため、臨床研究より一般に評価を得やすいと指摘。臨床の軽視に拍車がかかる恐れがあると危惧を呈した。

 さらに、これまではあまり大きな問題となっていなかった「知的所有権のあり方についても考えていく必要がある」と高柳氏は強調する。米国などでは医師が開発した新技術などを特許で守る方向にある。一方、日本では「医の倫理」の下にすべてを公開してきた。

 高柳氏は「このままでは日本で考案された医療技術に関しても、米国で知的所有権を登録されてしまい、日本は利用料を払って治療を行う必要が出てくるかもしれない」と警鐘を鳴らし、学会として何らかの対策を取るべきと呼びかけた。(山崎大作、日経メディカル

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