2003.03.30

高血圧患者の運動療法、効果判定にPWV測定が有用

 高血圧患者に運動療法が有用なことは、数々の介入研究で実証されているが、「運動しても血圧が下がらない」人ではやる気も失われ勝ち。しかし、運動で血圧が下がらなかった人でも、血管の機能は十分に改善されていることが、脈波伝播速度(PWV)の測定から明らかになった。PWV値は血圧値にも相関していたが、運動による消費カロリーやインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)ともよく相関しており、「高血圧など心血管疾患のハイリスク者に対する運動療法の指標としては血圧値より鋭敏ではないか」と研究グループはみている。研究結果は、3月29日のポスターセッションで報告された。

 この研究を行ったのは、済生会滋賀県病院循環器内科の中村隆志氏(写真)ら。42〜70歳の高血圧患者で、運動習慣がなく、病状が安定している(過去1年間に降圧薬を変更していない)70人を対象とした。中村氏らは、対象患者のうち6カ月の運動療法プログラムに参加した44人(運動療法群)と参加しなかった32人(対照群)とで、血圧や運動消費カロリー、PWV値(上腕と足首の間を測定)などにどのような違いが出るかを調べた。喫煙者や不整脈、心不全、症候性狭心症がある人は対象から除いた。

 対象患者の平均年齢は59歳で、体格指数(BMI)の平均値は25、3割強が女性。9割弱が降圧薬を服用しており、半数弱に心血管疾患の既往、約半数に糖尿病または耐糖能異常があった。運動プログラムへの参加者は、まず運動療法への動機付けを行うカウンセリング(行動療法)を受講後、1日45分・週4日以上ウォーキングを行うよう指導を受けた。指導された運動を75%以上やり遂げた人は運動療法群の57%。運動療法群、対照群のいずれも、期間中4〜6週間、身体活動による消費カロリーの測定装置を装着した。

 その結果、対照群の運動消費カロリーは週当たり1000kcal前後だったのに対し、運動療法群では2000kcal超で、運動療法により運動による消費カロリーがほぼ倍増したことが判明。血圧値や心拍数も、対照群ではほとんど代わらなかったが、運動療法群では低下した。

 ところが運動療法群だけでみると、同じくらい運動を行っているのに、およそ半数の人では血圧が十分には下がらなかった(4.5mmHg未満)。こうした“運動に血圧が反応しにくい人”(低反応群、21人)には、元々の血圧がさほど高くない人が多かった。

 しかし、低反応群でも、運動に血圧が反応しやすい人(高反応群、23人)と同様に、6カ月の運動療法後はPWV値が改善。PWV値の変化幅は血圧値の変化幅のほか、運動による消費カロリー値とよく相関しており、「運動の効果が血圧に現れない人でも、血管の機能は運動で改善される」(中村氏)ことがわかった。インスリン抵抗性を反映するHOMA-IRの変化幅はPWV値の変化幅と相関していたが、血圧値の変化幅とは相関していなかった。

 PWV値は血管の中を脈波が伝わる速度で、主に太い動脈の軟らかさ(伸展性)を反映するとされる。一般に年を取ると血管は硬くなるが、「血管が硬い人ではPWV値が高く、軟らかい人では低い」との関連に基づき、「血管年齢」の指標として人間ドックなどでの採用が進んでいる検査値だ。「PWV値にはインスリン抵抗性がどの程度改善したかも反映されるため、いわゆる“マルチプル・リスクファクター”に対する運動療法の評価という観点でも意義が大きいのでは」と中村氏は話している。

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