2003.03.10

アスピリンは大腸癌を予防するか?、注目の介入試験2報がNEJM誌に掲載

 観察研究では効果が示唆されているものの、介入試験では明確な結果が得られていない「アスピリンによる大腸癌予防」に関し、新たなエビデンスが追加された。大腸癌ハイリスク者を対象とした介入で、“前癌状態”とされる大腸腺腫の発生率などがプラセボ群より有意に低下するとの2試験結果が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌3月6日号に掲載された。

 アスピリンなどの非ステロイド消炎薬(NSAID)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して、アラキドン酸から炎症性サイトカインのプロスタグランジンなどが産生されるのを防ぐ効果を持つ。近年、COXにはCOX-1とCOX-2の2種類があり、大腸腫瘍ではCOX-2が高頻度で発現していることが判明。COX-1とCOX-2の両者を阻害するNSAIDや、COX-2の選択的阻害薬を使った大腸癌の化学予防に注目が集まった。

 現時点までに、選択的COX-2阻害薬とNSAIDの一部に関しては、家族性大腸ポリポーシス患者に限り、大腸腺腫の再発予防効果が確認されている。しかし、アスピリンに関しては、観察研究では大きな予防効果が示唆された半面、介入試験の大半は「効果なし」との結果に留まっていた。

 今回発表された試験の一つ、「the Colorectal Adenoma Prevention Study」は、米国North Carolina大学のRobert S. Sandler氏らが実施したもの。大腸癌の既往がある615人を無作為に2群に分け、プラセボまたは腸溶性アスピリン325mgを連日投与、大腸腺腫の発生数などを比較した。試験は中間解析で有意差が出たため早期中断された。評価を行った517人では、無作為化から大腸内視鏡検査までの期間の中央値は12.8カ月で、大腸腺腫の発生率がアスピリン群(17%)でプラセボ群(27%)より有意に低かった。

 もう一つの介入試験「Aspirin/Folate Polyp Prevention Study」は、米国Dartmouth-Hitchcock医療センターのJohn A. Baron氏らが行ったもの。大腸腺腫の既往がある1121人を無作為に3群に分け、プラセボ、アスピリン低用量(81mg)またはアスピリン高用量(325mg)を連日飲んで、1〜3年後に大腸内視鏡検査を行った。大腸腺腫発生率はプラセボ群が47%、アスピリン低用量群が38%、アスピリン高用量群が45%で、アスピリン低用量群にのみ腺腫発生の予防効果が認められた。進行癌の発見率も低用量アスピリン群で4割低かった。なお、この試験では葉酸1mgの介入効果も調べているが、今回はアスピリンに関してのみ結果が発表されている。

 今回得られた結果に関し、Sandler氏らは「アスピリンに一定の大腸腺腫予防効果があることを示すものだが、アスピリン服用者にも大腸腺腫が発生している以上、大腸内視鏡検査の代わりにはならない」との見解を提示。Baron氏らも「ハイリスク者全例へのアスピリン服用を推奨するには、今回の結果はまだ不十分(premature)」とみている。今後は、長期連用による副作用の厳密な評価や、例えば「アスピリン服用で大腸内視鏡検査回数を減らせる」といった効果の検証などが、アスピリンによる大腸癌化学予防を考える上での中心課題となりそうだ。

 Sandler氏らの論文のタイトルは、「A Randomized Trial of Aspirin to Prevent Colorectal Adenomas in Patients with Previous Colorectal Cancer」。アブストラクトは、こちらまで。Baron氏らの論文のタイトルは、「A Randomized Trial of Aspirin to Prevent Colorectal Adenomas」。アブストラクトは、こちらまで。

■参考トピックス■
◆ 2002.10.2 日本癌学会速報】小麦ふすま・乳酸菌は大腸癌を予防するか?、注目の長期介入試験が結果発表

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