2003.02.21

「ジゴキシン血中濃度は0.8ng/ml以下が望ましい」、DIG試験サブ解析が示唆

 慢性心不全患者の生命予後は、ジゴキシン血中濃度が0.8ng/ml以下の群でのみ改善する−−。こんな驚くべき解析結果が、Journal of American Medical Association(JAMA)誌2月19日号に掲載された。ジゴキシンの有効血中濃度は一般に0.8〜2.0ng/mlとされてきたが、この“有効下限”を下回る濃度でのみ生命予後改善効果がみられたとの結果で、慢性心不全患者に対するジゴキシン療法のあり方に一石を投じそうだ。

 今回発表された解析は、1997年に発表された「DIG」(Digitalis Investigation Group)試験(NEJM;336,525,1997)のサブ解析。「DIG」試験は、左室駆出率(EF)が45%以下の慢性心不全患者7788人を対象に、ジゴキシンが予後に及ぼす影響を検討したプラセボ対照無作為割り付け二重盲検試験だ(補助試験ではEF>45%の988人が対象)。ジゴキシン群では「入院あるいは心不全増悪による死亡」は有意に減少したが、生存率はプラセボ群と変わらないという結果が得られている。

 米国Yale大学のSaif S. Rathore氏らは、この「DIG」試験の参加者のうち、ジゴキシン群の男性3782人を対象に後解析(post hoc)を実施。試験開始1カ月後のジゴキシン血中濃度で3群に分け、プラセボ群男性(2611人)と生存率を比較した。3群の内訳は、低濃度群(0.5〜0.8ng/ml)が572人、中間濃度群(0.9〜1.1ng/ml)が322人、高濃度群(≧1.2ng/ml)が277人。平均追跡期間は37カ月だった。

 その結果、まず、血中ジゴキシン濃度の上昇に伴い、死亡率が有意に増加する傾向があることが判明。ジゴキシン低濃度群ではプラセボ群より絶対値で6.3%、死亡率が有意に減少していたが(95%信頼区間:2.1〜10.5%)、高濃度群では逆に11.8%増加していた(同:5.7〜18.0%)。中間濃度群の生存率はプラセボ群と同等だった。

 ただし、高濃度群の患者はプラセボ群より高齢でやせており、心機能や腎機能が低く、利尿薬併用率が高いなど患者背景には若干の差がある。そこで研究グループは、こうした生命予後に影響を与え得る因子を多変量解析で補正したが、低濃度群における死亡リスクの減少は有意なままだった(相対危険率:0.85、95%信頼区間:0.68〜0.94)。

 これらの結果からRathore氏らは、EF45%以下の男性慢性心不全患者の場合、ジゴキシンの至適血中濃度は0.5〜0.8ng/mlだと結論付けている。今回得られたデータは、ジゴキシン療法の治療方針に今後大きな影響を与えるだけでなく、“強心作用によらないジゴキシンの効果”への関心をも喚起するものと言えるだろう。

 この論文のタイトルは、「Association of Serum Digoxin Concentration and Outcomes in Patients With Heart Failure」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

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