2002.12.19

カルシトニン遺伝子KOマウスで骨量が増加

 カルシトニンをコードする遺伝子をノックアウトしたマウスで、意外なことに骨量が増えることがわかった。カルシトニンは、骨量の減少(骨吸収)を妨げるホルモンで、わが国では20年以上前から誘導体が骨粗鬆症の治療に使われている。カルシトニンがなければ、当然骨量は減ると考えられていただけに、今回の結果は大きな驚きを持って迎えられそうだ。研究結果は、Journal of Clinical Investigation誌12月15日号に掲載された。

 骨の新陳代謝は、古い骨の除去(骨吸収)と新しい骨の産生(骨形成)との微妙なバランスの上に成り立っている。女性が閉経を迎えると骨量が減るのは、このバランスが大きく骨吸収側に傾くためだ。カルシトニンは骨吸収を抑制するホルモンで、カルシトニンの補充は、閉経後女性の骨量維持に役立つことがわかっている。

 カルシトニンをコードする遺伝子はCT/CGRPと呼ばれており、この遺伝子からは、カルシトニンのほか、カルシトニン関連ペプチドα(CGRPα)というペプチドも読み出される。CGRPαの作用にはまだ解明されていない点が多いが、少なくとも骨形成を促進する作用はあると考えられている。

 米国Texas大学M. D. Anderson癌センターのAna O. Hoff氏らは、このCT/CGRP遺伝子を働かなくしたノックアウト・マウスを作製。成長に従って骨量がどのように変わるかを調べた。このマウスは、カルシトニンとCGRPαの両者を産生しないため、「骨量は変わらないか、減るのではないか」とHoff氏らは考えた。もしかしたら、産まれたノックアウト・マウスは骨が弱く、無事に育たないかもしれないとの予想もあった。

 ところが、産まれた時の骨格などの発達状況に、野生型マウスとの違いはまったくなく、成長に従って骨量が野生型マウスより増加することが判明。3カ月後の骨量は野生型マウスの2倍になった。このノックアウト・マウスでは、骨形成が亢進しており、甲状腺ホルモンへの反応性も野生型マウスより高かった。

 さらに、卵巣を除去して人為的に閉経状況を作り出してやると、野生型マウスでは骨量が2カ月でおよそ3分の1減少。一方のCT/CGRP遺伝子をノックアウトしたマウスでは、骨形成がますます亢進し、骨量が維持されることが明らかになった。

 今回得られた結果は、CT/CGRP遺伝子が、おそらく骨形成を抑制する作用を持つ“第3の蛋白”を状況に応じて発現する可能性を示唆するもの。カルシトニンやCGRPαに、従来知られている以外の作用がある可能性もある。研究グループは、CT/CGRP遺伝子産物に対する拮抗薬が、新たな骨粗鬆症治療薬の候補物質になり得るのではと考察している。

 この論文のタイトルは、「Increased bone mass is an unexpected phenotype associated with deletion of the calcitonin gene」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 誤嚥性肺炎の「退院」って何だろう? 吉松由貴の「誤嚥性肺炎、診療の知恵袋」 FBシェア数:56
  2. ふるさと納税制度が改悪!? 私たちへの影響は Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:0
  3. 新しい米コレステロール管理GLのアルゴリズム 学会トピック◎米国心臓協会学術集会(AHA2018) FBシェア数:79
  4. GPは外科をどこまで学ぶべきか 谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」 FBシェア数:1
  5. 「妊婦税」で大炎上! でも妊婦加算は必要だ 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:20
  6. インフルエンザ、全国的に流行期に突入 インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:13
  7. ディオバン高裁判決から見る医療界の課題 弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』 FBシェア数:4
  8. こんな組織は“チームスクラップ”候補に! 裴 英洙の「今のままでいいんですか?」 FBシェア数:2
  9. なぜ生活保護受給者だけに後発品を原則化するのか Inside Outside FBシェア数:199
  10. 65歳男性。失神 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
医師と医学研究者におすすめの英文校正