2002.12.16

下肢の切断と再建で身体機能や心理・社会的状態に差なし、2年間の前向き追跡研究で判明

 下肢にひどい怪我を負い、足を切断した人と、足を手術で再建した人とでは、総じてみれば身体機能や心理・社会的状態などに差がないことが明らかになった。重度の下肢外傷患者569人を前向きに2年間追跡した結果で、「足を残す」ことが必ずしも身体面・精神面でより良い状態につながるとは限らないことを示すものとして注目されそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌12月12日号に掲載された。

 外傷の治療では、温存できる部位は温存するというのが基本的なスタンスだ。近年の技術進歩で、以前なら切断を余儀なくされたようなひどい外傷でも、下肢を残せるケースが増えてきた。その一方で、義足も外観・機能の両面で大幅に改良されており、「十分に動かない足を残すより、切断して義足などを使った方が良い場合もあるのでは」との見方もあった。

 そこで、米国Carolinas医療センター整形外科部門のMichael J. Bosse氏らは、米国の一次外傷センター8施設に重度の下肢外傷で入院した16〜69歳の患者569人を前向きに追跡。1年後、2年後の身体機能や心理・社会的状態などが、受けた治療によってどの程度変わるかを評価した。

 569人のうち384人が下肢の再建、161人は下肢切断術を受けた。下肢切断術を受けた患者の方が、来院時に足の脈が触れない人が多く(12.0%対53.2%)、開放骨折や深部静脈の損傷、多発外傷なども多かった。平均年齢や人種比率など、その他の患者背景に大きな違いはなかった。

 研究グループは、136項目からなる自記式の「疾患影響度プロフィール」(Sickness Impact Profile)を使って、怪我のために全般的な健康度がどの程度損なわれたかを、怪我の1年後と2年後の2回にわたって調査した。このスコアには怪我の部位や、人種、教育レベル、収入、保険状況などで違いがあったため、そうした点で補正した上で両者を比較した。

 その結果、下肢を再建した人と切断した人とでは、いずれも1年後より2年後の方が全般的な健康度が改善しており、1年後、2年後のどちらも両者でスコアに差がないことが判明。身体機能だけでなく、情動やコミュニケーションなど社会・心理的な側面でも、足を残した人と切断した人とに違いは認められなかった。

 一方、期間中に再入院した人の割合は、再建術を受けた人で47.6%と、切断術を受けた人の33.9%よりも有意に多かった。以上から研究グループは、「足を切断するかもしれないほどの大怪我をした患者には、再建術を行っても、切断した場合と2年後の転帰はほぼ変わらないことをアドバイスしてもよいのでは」と結論付けた。

 この研究で注視すべきなのは、再建術を受けた人の10.9%、切断術を受けた人の3.9%が、2年後の時点でも怪我が治りきっていなかった点。再建術患者の19.1%、切断患者の5.0%には、追加手術が必要と判断されていた。こうした点を鑑みると、さらに時間が経過した場合は結果が違ってくる可能性があり、より長期的な評価が期待されるところだ。

 また、怪我の部位によっても身体機能や心理・社会的状態に違いがあり、膝より上で切断した場合は、再建術を受けた人よりも特に心理・社会的状態が大幅に良好だった。逆に、膝で切断した場合は、身体機能と心理・社会的状態のいずれも、再建術を受けた人より大きく劣っていた。このような部位別のデータは、「切るか、残すか」という重大な判断を下す際に、ぜひ参照すべき貴重な資料と言えるだろう。

 この論文のタイトルは、「An Analysis of Outcomes of Reconstruction or Amputation after Leg-Threatening Injuries」。アブストラクトは、こちらまで。

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