2002.10.18

【日本癌治療学会速報】 「術後、どう生きられるか」を視野に入れた癌治療を−−会長講演より

 10月17日の会長講演「がん外科療法に求められるもの」では、今期会長を務める、国立がんセンター東病院院長の海老原敏氏が登壇。頭頚部癌の機能温存手術がどこまで進んだかを多数の症例とともに示し、根治性だけでなく術後の生活にも配慮した癌治療の大切さを訴えた。

 「声がかすれて病院に行ったら、癌が見付かって、喉頭を全摘した。それで声を失った患者さんに『あなたは治りました』と言えるだろうか」。海老原氏は冒頭、こんな例を挙げて、根治性のみを追及する外科手術の弊害を提示。「そういうもの(癌は治っても患者が普通の生活を送れなくなること)がない医療を考え続けてきた」と、機能温存手術の推進に尽力してきた日々を振り返った。

 癌の機能温存手術は、癌に冒された部位のみを切除する、あるいは多少浸潤部位を残してでも切除範囲を少なくする「縮小手術」と、切除後に皮弁などを用いて失われた機能をできるだけ補う「機能再建術」に大別できる。海老原氏は、口唇癌、舌癌、下咽頭・頚部食道癌と咽頭癌のそれぞれについて、会話や食事がほぼ不自由なく行え、容貌もさほど変わらないで済んだ症例を提示。根治性についても、拡大手術とほぼ変わらないレベルまで向上したことを示した。

 また、頭頚部癌の機能温存療法では、外科手術と並び放射線治療が大きな役割を果たす。しかし、海老原氏は可能な限り放射線治療を使わない方針だ。最大の理由は、頭頚部癌の場合、ほかの部位に癌が新たに出てくる「多重癌」の確率が極めて高いためだという。

 例えば中咽頭の癌の場合、再発や転移よりも、他の部位に新たに癌が発生する確率の方がはるかに高い。「頭頚部癌では、一つの癌はできるだけ外科療法のみで治し、放射線治療という切り札は次の癌が出てきた時のために残しておきたい」と海老原氏は話した。

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